第22話

ダンクとの決闘から数日。

足りなかった冒険者の登録料が貯まった。


毎日クラドルとフレアと共に依頼をこなし、それなりに節約してようやく得た金額だ。


貯まったのは二人も同じで、三人はこれで晴れて真の冒険者になる試験に挑戦できるというわけだ。


オルカは推薦状があるため、さっそくギルドで登録を終わらせたのだがクラドルとフレアは違う。


二人ともまだ試験に挑戦するつもりはないようだった。



「最後の方はほとんどオルカに助けられてたしな。失敗したらまた一から金を貯めないといけねぇからもう少し力をつけてからにするよ」



クラドルはそう言って笑った。

推薦状を使ったオルカのことを二人は「ずるい」とは一言も言わなかった。


冒険者ダンクの名前は二人も知っていて、相当な強者だというのもわかっていた。


そのダンクに勝ったというのだから、「ずるい」と思うわけがない。


なによりも、一緒に戦った二人はオルカの強さを一番認めていたのだ。


最初の頃はぎこちなかったオルカの動きが、依頼をこなしていくうちにどんどん変わっていったのである。


タオやカースに指示を出すのも一々声をかけたりせずに指の動きと視線だけで伝えるようになった。


そのおかげか、オルカ達の連携が前よりももっと良くなったのだ。



クラドルでは上手く盾役ができないような強い魔物と戦った時は代わりにタオが盾役になる。


トドメを刺すのも覚醒したカースならばフレアよりも時間をかけずに攻撃できるのだった。


クラドルもフレアもビーストテイマーの強みをようやく理解した。


ビーストテイマーはチームを組む必要がないのである。


連れている聖獣がそれぞれの役割をこなして戦うために盾役も後衛もいらない。


三人がチームを組んでこなしてきた依頼はもしかするとオルカだけでもなんとかなったのではないか。


そのことに気づいてから二人はオルカに少し申し訳なく思っていた。


オルカが一人で依頼をこなしていれば、もっと早く登録料を貯められただろうから。


だからオルカの力が認められて推薦状を貰ったと知った時、二人は素直に賛辞の言葉を伝えられたのである。


推薦状のおかげで冒険者登録を無事に済ませたオルカはナルニカの街を旅立つことにした。


オルカとしてはクラドルとフレアともう少し一緒に戦ってもよかったのだが、二人がそれを拒否したのである。



「お前は一流のビーストテイマーになるんだろ?だったらこんなところで油売ってねぇでさっさと行け」



「私達がもっと強くなって、オルカさんと肩を並べられるようになったらまた一緒に戦いましょう」



それ以上オルカの邪魔をしてはいけないと思った二人はそんなことを言ってオルカを送った。


名残惜しくもあるオルカだったが、二人のいうことは最もである。

オルカには聖獣を見つけた仲間にし、さらに強いビーストテイマーになるという役目がある。


それに、これが根性の別れというわけではない。冒険者は旅をする者だ。二人が冒険者を続けていればまたどこかで出会えるかもしれない。


旅立つ前に三人で初めて行った食事屋で宴会をした。


登録料を支払って余った分のお金でオルカが奢ったのだ。


美味しいお酒と美味しい食事。短い付き合いではあるが、毎日ずっと一緒にいたために思い出話にも花が咲く。


酔いが回ったせいか、最後の方は三人とも泣いていた。


寂しいからか、嬉しいからか、感情が混ざってもう訳もわからなかったが、オルカはこの日のことを決して忘れないと心に決めた。


夜が明け、空がまだ白んだ早い朝。

目覚めたオルカはまだ酔いが残っているのか、少し赤い目をした二人に見送られてナルニカの街を旅だった。


冒険者の街、ナルニカ。

強くて逞しい者たちの中でオルカは戦い方を学び、一つ強い男になったのだった。

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動物嫌いでも最強のビーストテイマーになれますか〜転生した先は苦手な動物を操るビーストテイマーの家系でした〜 六山葵 @SML_SeiginoMikataLove

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