第5話 浮上、そして、空賊
「ちょっと!、も〜、どっか行っちゃってるし。」
「あの少年を信じるしか無いのでは、」
私が分かってることをよく言うからそういう所嫌なんだよなぁ。
「…そうだね、シンベル」
今、浮上するにはこの黒い海を、取っ払うことが必要だ。
あの子にそれが出来るか。いや、きっとできる。だってこの私が驚愕するほどの強さが、視えた。
「第1ロケットは、…こっちか。」
先程見たマップを思い出す。そう鮮明にまるで古き時代に見たゲームのように。
駆け出す、この船が沈む前に。
「熱っ、これなんだ?」
船外に出ると、ロケットが壊されている。溶けだした断面が花弁のように溶接が剥がれ落ちていく。熱を持った破片は互いに擦れ合い火花を散らしている。煙と謎のガスの臭いが辺りを包む。
「なら、こいつを…!」
第1ロケットの上に回り、左腕を変形させる。まるで旧世界の円形の切除機材のような刃は曇天を反射している。
「おりゃああああああああぁぁぁ!!!」
第1ロケットは刃と擦れ合い激しく火花を散らす。そして、
『第1ロケット・ロスト。』
と警報がなる。第1ロケットが切り離された。ロケットを目で追うとさっきまで舟の一部だったものが砂の大地に吸い込まれていく。
「ここに、腕を!」
僕は腕を伸ばす。僕の腕は螺旋状に絡み合う金属で出来た剛性な物質でできている。空いた空間に手を伸ばす。腕が成長する木の枝のように分かれながら、伸びていく。大きなロケットの形になっていく。そして、
「うぉっ、…く、」
腕を切り離す。新たなロケットは順応していく。
「大丈夫っ?!、酷い出血。」
フラガリアの声が聞こえる。また視界が霞む。もう無理だろう。
「キュアル!キュアルキュアルキュアル!」
あれ、…意識が戻ってくる。視界が色づいてきた。まるで無色の水に色を落とした時のように。
「う、…くん…は、もう、…」
気がつくと横にはフラガリアが倒れていた。ただ疲れて寝込んでいるようだ。少しづつコツコツと音を鳴らしてシンベルが彼女の元に来た。
「フラガリア、よく頑張りましたね。」
シンベルはそう言うと彼女を抱えて、近くのドアに向かった。
「アード。」
と唱えるとカチっと音が鳴る、彼は部屋に入る。
しかし何故だろうか、なぜこの二人はこんな舟で空を駆けているのだろうか。僕は考えを巡らせても答えが出ないので。
Steam-Makina 最強兵器とメンヘラ令嬢の蒸気飛行船紀行 理想論者 @cometeor0125
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Steam-Makina 最強兵器とメンヘラ令嬢の蒸気飛行船紀行の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます