第8話*祝福の儀と課金の代償
家族総出となるはずが、三人も欠席者が出てしまい、落ち込む母。
この人は、俺が神の祝福を受けられるかを案じてくれているのだ。
きっと、断俗を強要したのも俺を思っての事だろう。
慰めの言葉をかけたいところだが、チュートリアル中だからなあ。
結局、俺は慰めるどころか一言も発することができないまま、馬車に揺られて神殿まで来てしまった。
神殿は一言でいうと真っ白だった。
石材で建てられているようだが、大理石よりも白い、どこか神聖さを感じさせるまでに漂白されたような色だった。
ある意味特徴的な色にばかり気を取られていたが、神殿は家と比べて質素な作りだった。
しかし、太陽を崇める構図の彫刻は華美ではないが、素人にもわかるほど丁寧に作りこまれていると感じられる。
神殿の外観に目を奪われていた俺は、母に促されその中に入っていった。
まず、目に飛び込んできたのは、正面の奥にある、巨大なステンドグラス。
そこに太陽の光が差し込んで、鮮やかな影を神殿内に落とす。
そして、そのステンドグラスに描かれているのは、太陽の光を受けて力を得たような風体の勇者だかなんだかが黒っぽい靄に立ち向かっている様子だ。
なるほど。
この神殿が信仰する神はズバリ、太陽神だな!
俺が一人で名推理を展開させている最中にも、祝福の儀の準備は着々と進んでいく。
やがて、その準備も終わり、俺は中央に鎮座する円形の台に立たされた。
プロイは壁にもたれかかり、腕を組んで興味なさげな態度をとっている。
母は祈るように手を組んで、食い入るようにこちらを注視している。
対照的な二人だ。
神官の指示に従い、俺は目を閉じる。
すると、スーッと人の気配が遠くなる。
<< ステップ2:『交換所』で転生特典を交換しよう! >>
交換所?
目を開く。
すると、またあの何もない空間だった。
ただ前回と違うのは、俺に体があること。
それから、スマートフォンらしきものが浮かんでいることだ。
とりあえず、スマートフォンを見ると、その画面には何かのゲームのショップらしきものが映っていた。
交換所で転生特典を交換……。
見たところ何も交換せずに終えることができるようだが、せっかくだしチートは欲しい。
しかし、交換するための『ハート』が一つもない。
課金するしかないか。
所持ハート:0、と書かれている横にある、プラスが描かれたボタンをタップする。
すると、新たな文言が現れる。
<<■■■■ を消費して課金しますか?>>
<<所持ハート:0→1>>
なにを消費するのかわからないが、課金というからには金銭だろう。
しかし、俺は金などは持たせてもらってないから、金目の物かもしれない。
――俺は画面に映しだされた”はい”の文字をタップした。
そして、そのハートを使ってあるチートと交換し、俺は再び目を閉じる。
人々の喧騒が聞こえてきたので、目を開く。
そこには、心臓をえぐりとられ、仰向けに倒れる母の姿があった。
異世界転生特典はガチャ 未環 @Miku0903
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