2月第3週 交渉人・出歯無

『マスカット・ベーリーA キュベ・デ・ザミ

 2020

 ベルウッド・ヴィンヤード』


 山形県上山市に2020年に誕生したワイナリーである。

 その名の通り、BellWoodさんが立ち上げた新しいワイナリーであるが、とあるワイナリーで19年もワイン造りの前線に立ってきた実力者だ。

 今回のワインは、ワイナリー立ち上げ年の1本、同じ市内の別地区で栽培する知人の厳選ブドウで造られた最高クラスのモノだ。


 早速開けてみよう。


 紫がかったダークな色合い、樽由来のローストした香りがやや感じるが十分に熟したイチゴもある。

 味わいは、基本的に軽めに造られる日本品種のベーリーAとは思えないほどのパワフルな濃縮感だが、タンニンは滑らかで黒い果実も感じる。

 だが、酸味も豊かにあるからか長い余韻も心地良い。


 流石は鈴木氏、良いモノを造りよる。


『トマトソースの煮込みハンバーグ』


 さて、何を食べようかと考えたが、定番らしくトマトソースでハンバーグを作ってみた。

 作り方は簡単にすでに形ができているハンバーグを買ってきて、トマトソースを作って煮込んだだけだ。


 ソースはキッコーマンのレシピを採用した。

 https://www.kikkoman.co.jp/homecook/search/recipe/00051893/


 ハンバーグをフライパンで両面を焼き、レシピ通りに混ぜ混ぜしたトマトソースでじっくりと煮込めば完成だ。


 さて、実食。


 トマトソースの甘酸っぱさが食欲をかき立ててくれる。

 しかし出来合いのものだからか、それとも焼き方が悪いのか?

 ちょっと固くなってしまったハンバーグである。

 それでも味は悪くはない。


 乗っけてみたチーズもまろやかで良いアクセントだ。


 ではワインと合わせてみよう。


 パワフルで味わい深いワインである故に、トマトソースと上手く溶け合いより良い濃厚な味わいとなってくる。

 固いハンバーグとなってしまったが、その分噛みしめる度に旨味が滲み出てくるようだ。


 まさに災い転じて福となす(意味が違う)


 良いワインであったが、料理をやや失敗してしまった。

 だが、それでも組み合わせとしては上手く補い合ってくれたようだ。

 想定外の事態でもより良い方向性に持っていける。

 これもまたワインと料理の妙であるのだろう。


☆☆☆


 この週は一体何をやったのだろうかと振り返る。


 先週末に地元伝統催事『加勢鳥』のイベントがあったわけだが、三連休の最終日は特に何をするわけではなかった。

 とりあえず、経営計画書を書こうと思ったのだが、どうにも集中力がなくてパソコンの前でダラダラと過ごし、気が付けば昼も過ぎてしまった。


 どうにも筆が乗らない時には思い切ってスッパリとやめてしまおう。

 強酸性蔵王温泉に向かった。


 今年の異常な暖冬で雪が少ないにも関わらず、三連休だけあって冬山観光客らしき人間だけは多かった。

 温泉も混んでいて芋のごった煮状態、それでも気分転換で脱力だ。

 

 頭からっぽのほうが夢つめこめる、チャラチャラっと♫


 その後は出稼ぎで剪定である。

 しかし、何なのだろうか?

 異常な暖かさで汗が出てくる。

 

 高い山の山頂以外はどこも雪が溶けてしまっている。

 ついでに呪の日のチョコレートも溶けてしまえば良い。


 そんな中でも自分の仕事も行う。

 酒販免許で更なる追加書類が発生してしまった。

 管轄はあの税務署なので、面倒でもやるしか無い。

 敵に回してしまったら恐ろしい相手なのだ。

 なぜか政治屋たちには優しい気がするが。


 そうして追加書類である建物登記の全部事項証明書を法務局へと取りに行く。

 これは誰でも簡単に取ることができる書類だが、わりと重要書類でもある。

 不動産の権利関係の証明書なのでセキュリティがゆるゆるで、どうなのだろうかと思うが気にしないでいよう。


 そんな全部事項証明書を取得したわけだが、ここで問題発生。


 すでに分かっていたことだが、僕が現在住んでいる家は中古住宅で、月々分割払いで全額支払い終えたら所有権の移転になる契約である。

 しかしながら、持ち主が以前に相続して取得したわけだが、建物に関して登記がされていないのだ。

 それ故に、僕の住む家は登記簿上存在しない家になる。

 登記簿上はそれ以前に建て替えられる前の茅葺屋根の古民家になっていた。


 さて困ったぞ、となり、不動産契約書類を再び見直してみた。

 そこにとある書類を見つけた。

 そこで閃き、税務署の酒類担当者に電話をかけてみた。


「あの、建物の全部事項証明書が昔の建物のままで現在の状態になっていなくて……云々」

「ええ? それでは駄目ですね。申請書の書類にある販売所の住所が、公的書類と同じである裏付けが必要となりますので……云々」


 僕は事情を説明するが、想定通り形式書類が無ければ話がうまく進まないようである。

 しかし、僕はここまでは想定通りと、閃いたことで交渉を始めた。


「実は不動産の売買契約所の中に、固定資産税の支払い明細書のコピーがありまして、そこでは現在の建物になっていました……云々……で、固定資産税の支払い明細書も公的書類なのでこちらで代用できないでしょうか?」

「ええと……(少々間が空く)、もしかしたらそれでも良いかもしれません。確認のために郵送か持参でも良いので提出してください」

「それなら、今から持っていきます」


 僕は即決速攻、車で45分程の距離にある税務署へと向かっていった。

 そうして直接提出し、その場で確認してもらい、これで良いだろうという話になった。


 あの恐るべき税務署もわりと融通が利くようだ。

 これで次の段階へと進むことができた。


 始めから駄目だと諦めずに、別ルートを見つけ妥協案で交渉する。

 これもまた大事な生存能力なのだろうと思う。


 他にも地域の新規就農者たちの会合もあった。

 その時に就農前と就農後で経営計画がどのように変化していったか、そんな発表会をして食事会を行った。

 同時期同士なので色々と刺激となることもあった。


 さらにオマケで付け加えれば、この週末は異常な好天、畑仕事も前倒しで農閑期ののんびりモードから通常運転へと切り替えたのだった。

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