2月第2週 奇祭で奇才となれるか?

『ラルム セレスト

 2018

 ドメーヌ アラン ブリュモン』


 フランス南西部バスク・ピレネー地方、青く輝く大西洋や、緑豊かなピレネー山脈を併せ持つ独特な文化圏にある地方にマディランという町がある。

 マディランを代表する生産者アラン・ブリュモン、かつてボルドーに似たワインが造り出されていた時代に「もっとマディランらしいワインを」と取り組み、世界に認めさせた功績は大きい。

 

 今回は極甘口白ワインを開けよう。


 黄金のように輝く液体、濃縮した様々なフルーツなどの華やかな香りだ。

 味わいも濃厚な甘みがあるが、フレッシュな酸味のおかげで軽やかで深い余韻がある。


 荒んでしまった心もどこか癒やされていく。


『◯花亭風バターサンドとビターチョコ』


 例の呪われた日の前倒しであるが、自分へのプレゼントを作ってみた。

 どれも買ってきたものを組み合わせただけのことであるが……


 シンプルなプレーンクッキーにスライスしたレーズンバターを挟み、苦味を強調した暗黒のようなビターチョコを添えるだけだ。


 さて、食べるとするか。


 程よい甘さのサクサク感、レーズンバターによるまろやかでほのかな甘味、ビターチョコの持つ苦さの中にある仄かな甘味が良いアクセントになっている。

 我ながら、美味くできたな。


 でも、なぜだろう?


 途中から塩味が強くなってきたような気がする……


 そして、ワイングラスに手を伸ばす。


 ああ、なぜだろう?


 胸の痛みが消え、怨嗟に縛られていた心が浄化されていく。

 天に昇るかのように甘い癒やしの一時、この虚構の優しさだけで人はまだ生きていけるのだ。


 そうだな。

 たまには酒に溺れても良いんだ。

 辛い現実を一時でも忘れることさえできれば。

 朝にまた立ち上がって戦いを挑めば良い。

 

 それが、残酷な世界を生き延びる秘訣なのだから。


☆☆☆

 

 2月も中旬に入り、気が滅入ってくる。


 どこに出かけても呪われた日『バレンタイン』というモノが目に憑くようになったせいだろう。

 何がそんなに嬉しいのだろうか、たかがチョコレートを。

 ……鼻血を出して◯ね。


 さて、この週は一体何をやったのだろうかと振り返ってみた。


 生存するために出稼ぎへ行くことは先週に引き続き、これからもやっていくことは変わらないだろう。

 寒波がやってきて積もる程の大雪となったが、その後の日中の陽気であっという間に消え失せてしまった。

 

 今年の暖冬の異常さもどこか当然のようになってしまったが、この週で大きなことといえば、酒販免許の申請書をついに提出してきたことだろう。


 ワインを含む酒類を販売するためには、免許が必要となる。

 その免許も販売方法でまたさらに細分化される。


 例えば、酒屋を始めとしてスーパーやコンビニなどの店頭で小売する場合には『一般酒類小売業免許』というものが必要となる。

 オンラインショップを始めとする、ネット通販やカタログ販売などには『通信販売小売業免許』というものが必要となる。

 酒売り場のある実店舗がある場合でも、通信販売用の免許が無ければ通販はできない。


 他にも酒屋へ販売するには卸売用の免許や飲食店で提供する場合でもまた違う免許になる。

 酒の種類によって免許も様々なものがあり、一口に酒を売ると言っても売り方で実に煩雑な手続が必要なのである。


 つまり、たとえワインを造っても、酒を売るための免許が無ければどこにも売ることができないのだ。


 その免許は、みんなが恐れる税務署の管轄となる。


 その理由も酒税というものがあり、大事な税収と考えられているからだ。

 ……何に使われているのかは知らんが。


 分厚い書類の束を提出したわけだが、どれだけ自分では完璧と思っても当然ながらどこかに不備は出てくる。

 後日、不備書類の再提出もしてきた。


 免許の申請から許可となるまでに2ヶ月という膨大な時間が要される。

 その間にもできるだけ準備は進めておく。


 免許が取得されたとしても、販売者個人としてさらに講習を受けている必要がある。

 酒類販売管理者という、どこかの小売業協会で行われる講習修了者が販売事業者に必ず1名いないといけないのだ。

 

 失笑してしまうような小芝居のDVD講習、眠気に襲われる講義を半日耐え抜き、ようやく修了となる。

 こうして着々と準備を進めていった。


 そして、この週末、地元駅前にあるワインカーブでイベントが行われ、販売者側で参加してきた。

 以前からお世話になっている地元ワイナリーで、僕がコンセプトから考えて造ったワインをイベントで出したから僕自身の存在の宣伝のためでもある。


 三連休の初日である土曜日は、のんびりとした昼で始まり、夕方に多少人が増えてきて終わった。

 多分、普通の週末レベルだろうが本番は本日、イベントのメインである奇祭『加勢鳥』となる。


 加勢鳥という、五穀豊穣!商売繁盛!火の用心!と祈る民俗行事である。

 藁を頭から全身に被り物をして踊るというもの、百聞は一見に如かず、YOUTUBEで見ても良いと思う。

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