9月第4週 収穫祭
『シックス エイト ナイン ナパ ヴァレー レッド
2020
シックス エイト ナイン セラーズ』
アメリカ・カリフォルニア州ナパバレー、銘醸地として名高い産地である。
高価格なプレミアムワインを多く産出する産地であるが、今回のワインは抜群のコストパフォーマンスを誇る。
ラベルが実に特徴的であるだけではないが、人気が高いらしい。
今回のワインは様々な品種のブレンド、まさにごった煮の赤ワインだ。
さて、開けてみよう。
色合いは濃厚な程に赤黒い血のようだ。
香りはスモーキーなオークの森の匂い、ジューシーなベリー系のジャムの匂いもする。
味わいも見た目通り実に濃厚、ガツンとくるオークの燻した木の感じ、スパイスのような舌にピリッとくる刺激とチェリーのような甘やかさがある。
あまりにもフルボディでちびちびとしか飲めないが、ナパバレーらしい重厚な赤ワインだと思う。
『焼きそばパン』
焼きそばパン買ってこい!
というイジメが現実で本当にあるのかは分からないが、日本が誇る炭水化物の暴力である。
後半で語ることになる余り物の食材でとりあえず作ってみた。
材料はシンプルに、玉ねぎとニンニク、ソーセージを薄くスライスしてキャベツと共に炒める。
よく炒めたところで麺を投入してソースで混ぜるだけで簡単に作れる焼きそばだ。
これまた余り物のバターロールに切れ目を入れて出来上がった焼きそばを挟めば完成だ。
わざわざ買いに行かせなくても、自分で余裕に作れるお手軽料理だ。
味はバターロールの甘みが意外にも勝ちすぎている。
が、ワインとともに呑んでみれば印象は変わるかもしれない。
そして、ワインと合わせる。
こ、これは!
意外にも、合う!
ソーセージから出た脂がワインの持つ濃厚なタンニンを意外にも中和してくれて口当たりが滑らかになっている。
だが、一味足りない気がしたので、マヨネーズをトッピングしてみよう。
ちょっと薄味だった酸味とまろやかさが加わり、焼きそばパンに伸びる手がより速くなる。
疲れた身体にはきつすぎるワインもまた、どこか柔らかみを感じるほどに喉を通る。
意外や意外、余り物の安物ではあったがワインの友として十分すぎるほどの戦力となった。
これがあるからワインは、人生は面白いのだ。
☆☆☆
ついにキタァアアア!
待ちに待った収穫の週となった!
週間予報では、先週末から雨が続く予定だったので、雨の合間に収穫することになった。
雨の合間の水曜日と土曜日に決定した。
月曜日は天気が良かったので、通常通り開拓の続きをしつつブドウ畑の見回りを行った。
前日の火曜日は雨の降る前に午前中の早い時間で開拓をし、予報通りその後は雨となったので収穫の準備だ。
収穫は自分独りではなく、こちらで知り合ったワイン仲間たちが手伝いに来てくれることになっていた。
そこに賃金は発生しないため、せめて福利厚生だけはしっかりさせようと礼を尽くすことに決めた。
クーラーボックスと手洗い用の水タンクを買おう。
飲み物各種、お菓子セットも買おう。
その他諸々と買うとそれなりに形にはなった。
そうして当日、自畑の初収穫日だ!
水曜日に収穫する予定の量はわずか360kg、ペティアンのブレンド用の小ロットなのですぐに終わる予定だ。
ちなみに、ペティアンとは微発泡性のワイン、フレッシュで軽やかなので飲みやすいタイプである。
この日は4名で8時から緩やかに始めた。
やはり、みんな本職なので速い。
で、早めに休憩、のんびりとピクニック気分でブルーシートを広げて買ってきた飲み物とお菓子でゆっくりと休もう。
収穫は祭りと考え、つらいはずの仕事を如何に楽しむか?
これが実に大事だと思っている。
その後、再開して11時には本日の予定分は終了した。
そうして、ブドウの売り先であり、お手伝いに来てくれた地元の新規ワイナリーの「Drop」さんへと収穫したブドウを持ち込み計量。
予定よりもほんのちょっと少なかったが、無事に初日は終わった。
この後、近くの定食屋でランチ、美味しく頂いた後で解散となった。
もちろん、御礼をこめて僕の支払いである。
木曜日、金曜日は悪天候となったので、雨の合間を見計らい、開拓の続きを行った。
金曜日は午前中で通常業務はやめ、午後からは買い出しへと出掛けた。
土曜日はメインとなるので、人数も多くなる。
買い出しの量も必然と多いのだ。
そうして収穫本番の23日土曜日、7時から始め、8時頃から少しずつお手伝いさん達が集まってきた。
多くは近隣からだったが、遠くは埼玉からやって来てくれたので本当にありがたいことであった。
最終的には8名で行った。
午前中だけで終わる予定だったが、想定よりもちょっと時間がかかってしまった。
ワイワイと賑やかにのんびりとやっていたが、無給で手伝いに来てくれた皆さんをこき使うあくどい事はしない主義なので仕方がない。
ランチは、開拓中の畑へ移動してバーベキューだ!
車で3分の距離、空き地だけは広いのでいくらでもやれるのである。
実は前日に草刈りして場所作り、切り出した杉の丸太をゴロゴロと運んでベンチ代わりにした。
杉の葉、乾燥した大小の枯れ枝を細かくチェーンソーで刻んで、薪の準備もバッチリだ。
当日の早朝に、炭用と普段遣いの薪用のバーベーキュー台を二台設置し、使わなくなったキッチン台も持ってきた。
炭用で主に肉や野菜のバーベキューセットを焼いた。
薪用でピザを焼いた。
締めは炭用で鉄板での焼きそばだ。
みんな楽しそうに食べてくれている。
有志が肉を焼いてくれている。
焼き上がったピザも誰かが切り分けてくれている。
みんなが自由に、思い思いにみんなの為に動いてくれている。
これだ、これで良いのだ。
その後は、3時頃まで収穫を続け、ほぼ予定通りの収穫量を取ることができた。
残った部分を見ると、合計での総収穫量は見込みよりも微増といったところか。
前作『神の血に溺れる』で紹介した過去の海外での収穫の雰囲気がそこにある。
まだまだ足りないものは多いが、理想に一歩は近づくことができた。
だが、最後の収穫を25日の月曜日に行う。
それまで完全に気を抜くことはできないが、今夜(土曜の夜)ぐらいはゆっくりしたいと思う。
今回の収穫されたブドウは、本年2023年設立の山形県上山市の新規ワイナリー「Drop」さんでワインとなります。
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