9月第3週 緑肥を播いた結果
『ヴィッラ ローゼン モーゼル リースリング Q.b.A.
2021
ドクター ローゼン』
ドイツ・モーゼル地方で200年の歴史を誇るワイナリー、世界でも高く評価されている。
現当主エルンスト・ローゼン氏は昔ながらの素朴な醸造方法と最新の有機農法などを取り入れ、白ワインの王と呼ばれるリースリングを世界中に再認識させた功績は大きい。
今回はこちらのQ.b.A.(指定栽培地域上質ワインの略)モーゼル産のリースリングを試してみよう。
爽やかな柑橘系の香り、リースリング独特のガソリンのようなペトロール香がわずかに感じられる。
口当たりは軽やかでやや甘さのある味わいだ。
後味の良さにどこか癒やされるので、ワイン初心者にオススメしやすい。
『ナスと大葉の豚肉ロール』
暦の上では秋になったが、晴れの昼間はまだ暑いので夏野菜もまだまだ美味しい。
今回はそれなりに料理をしよう。
ナスを縦に4つ切りにし、豚ロースの薄切り肉を一番下にし大葉を上に敷き、ナスに巻きつける。
フライパンに薄く引いた油を熱し、肉巻きの継ぎ目を下にして焼色をつける。
両面に焼き色が付いたら、蒸し焼きにする程度の少量の水を入れて蓋をする。
ナスに火が通ったところで、醤油、砂糖、ほんだしでタレを作って煮絡ませる。
皿に盛り付け、最後に細かくした大葉をちらして10分クッキングの完成だ。
タレの甘じょっぱさが豚肉の脂とよく絡み合い、スタミナを回復させてくれるようだ。
ナスの水分がタレの味わいを中和してくれ、程よい濃さとなっている。
さらに大葉の爽やかな風味がさらに食欲を増進させてくれる。
ワインとも合わせてみる。
リースリングの爽やかな甘味が、タレと脂の濃さとうまく融合してくれる。
旨さを引き立て合い、食事を楽しませる。
栄養を吸収すると同時に気分も高揚させてくれる。
傷ついた身体の細胞が活性化され、生き返ってくるかのようだ。
畑もまた同じことなのだろう。
栄養失調だった状態も有機物とともに徐々に活性化していく。
生きるということは、何かを吸収し我がものとしていくことなのだろう。
☆☆☆
先週負傷した足も徐々に癒えてきた。
それでも完全回復ではないが、通常作業には支障がないだろう。
安定しないどんよりとした空模様、ほぼ毎日のように短い時間だが雨が降る。
まだ雨量が少ないので水分を吸収しすぎて、実割れをすることはないだろう。
しかし、湿度が高いので病気発生リスクは高くなってしまう。
そうした中でも雨の合間を見計らい、収穫前最後の農薬散布を行った。
最初の農薬散布は芽吹き前の4月、約半年間に12回、実に長い戦いだったと感じられる。
これでやれるだけの手は尽くした。
後は、収穫までの残り数日、天に祈るばかりである。
これだけ多くの農薬を使ったが、それでも多少の病気は出ている箇所はある。
目に見えない敵ほど恐ろしいのだと実感できるし、カラスを始めとする鳥の簒奪も侮れない。
まだ最後の総括である収穫が残っているので、気を緩めるには早い。
さて、開拓の畑の方であるが、周辺の木の伐採も終わりが見えてきた。
借り受けている土地にある今年切る分は小木のみ、命がけの伐採はどうにか終わることができた。
後は、人の土地にある巨木を切ってよいか、持ち主に問い合わせ中だ。
間に地元有力者の農業委員会が入っているので、こじれることはないだろうと思う。
農地開拓であるが、木を伐採して抜根、整地をすればすぐに苗木を植えられるわけではない。
4月に土壌診断をして栄養状態や地質について改良しなければならないことを語っと思う。
その計画の一部についてようやく語ろうじゃないか。
7月の後半の梅雨明け後のことであるが、酷暑の炎天下の中、伐採した樹木を焼いて炭や灰を畑に散らしていた。
まさに地獄の業火に焼かれていたので、よく生きていたのだと振り返って思う。
その後、トラクターで炭や灰とともに土を耕し、緑肥の種を播いていた。
緑肥というのは、植物そのものを肥料の一種として利用することである。
主に、マメ科やイネ科の植物が使われる。
さまざまな種類と効果があるが、第一に土壌に有機成分を供給する働きがある。
さらに土壌を物理的に改良する効果も高く、団粒構造の形成を促進するほか、透水性の改善や土壌病害を抑えるなどの効果も期待できる。
今回は、雪印種苗からの新商品、パールミレット・ネマレットを採用した。
特徴としては、奄美大島の強酸性土壌かつ粘土質ですら他の緑肥よりも生育に優れるというたくましさがある。
根も深いところに入り込むので土壌の改善を見込める。
人間よりも圧倒的に高く成長するので、有機物の生産量が多い。
ただ、生命力が強そうなので、ブドウよりも強くなりすぎないだろうかという懸念材料はある。
畑の外に勝手に出て行ってしまって周辺環境に影響を与えないだろうかというところもある。
それでもメリットの方が大きいので使ってみたわけだ。
そうして7月末に播いたが、梅雨明け後にカラカラに乾きすぎたのは想定外であった。
天気予報では何日かに一度は夕立のある予報だったが大外れ、全く水分が無い状態が2週間ほど続いた。
お盆にようやく雨が降り、畑に水分が供給されたのであった。
長らく炎天下で野蛮な太陽に焼かれた種子たちだったが、それでも水分が入ったら何事もなく芽が出てきた。
なんという生命力なのだろうか。
そこからの生育は凄まじかった。
気がつけば畑に緑の絨毯が広がっていた。
場所によって成長の速度が違うところがあるが、雑木林を切り払った栄養に富んでいる場所は特に凄まじい。
すでに人間の背丈を超えていた。
こうして畑のメイン部分もまた土壌改良が進み、ほぼ想定通りの軌道に乗り出した。
畑の開拓は苦労の連続ではあるが、朧気ながら未来の形が見え始めると思わず頬が緩むというものだ。
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