9月第5週/10月第1週 祭りの後そして今年最大の戦いへ

『アルシミスト ホワイト ドライ ワイン

 2022

 ドメーヌ スクラヴォス』


 ギリシャ・ケファロニア島にあり、観光業の盛んな島でもある。

 かつてはワインブドウ栽培が盛んだったそうだが、政府の方針でホテル用地に当てることを奨励されたために多くの畑を失ったそうだ。

 

 こちらのワイナリー、スクラヴォス家は先代の時代から畑を買い始め、現在は自然志向が高まり様々な自然農法を実践している。


 実は初めてのギリシャワインを試したいと思う。

 ギリシャの土着品種ロディティス主体で造られた白ワインを開けてみよう。


 ライトイエローで優しい色合い、なんと表現すればよいのか独特な香り、少し時間が経つと桃のような甘やかな香りが出てきた。

 味わいは香りに比べてわりかしスッキリとした辛口、りんごのような甘さ酸っぱさと塩のような感じもある。


 これはなかなか個性的で面白い海のワインだ。


『エビとキノコのアヒージョ』


 暑さ寒さも彼岸までというが、急にめっきりと涼しくなった。

 夜はわりと冷え込むようになってきたので、身体の暖まるアヒージョにしよう。


 アヒージョはオリーブオイルとニンニクで食材を煮込んだ料理のことで、スペイン南部の伝統料理である。

 地中海でつながるギリシャの島々でもシーフードをよく食べるので、エビをメインにしようと思う。

 シンプルにマッシュルームにしようと思ったが、エリンギが安かったのでこちらも悪くはないはずだ。

 

 アヒージョの作り方は実に簡単、今回は割愛してもよいだろう。


 熱々のエビを頬張る。

 プリプリのエビと塩と唐辛子の辛味が口の中に広がる。

 エリンギにもまた、ガーリックオイルの風味がよく染み込み、シンプルだからこそ食欲が増すのだ。

 アヒージョの真のメイン、出汁のよく出たオリーブオイルにバゲットを浸すだけで身体中に幸福物質が駆け巡るのだ。


 ワインと合わせる。


 この海と海の組み合わせが合わない訳がない。

 秋の穏やかな夜、ただただシンプルな旨味の奔流が止まらない。

 エビと塩気、まろやかなオリーブオイルとスッキリとした白ワイン、そこに溶け込むかのように心落ち着くのだ。


☆☆☆

 

 収穫は無事に完了した。


 合計してみると、収量2560kg、糖度20超え、ほぼ想定通りであり合格点といったところか。

 いや、1年目で合格点になったのならば上出来といったところだろう。


 とりあえず一安心、祭りの後の達成感はある。

 しかし、今年最大の戦いがまだ残っている。

 新しい畑の開拓だ。


 何も急ぐ必要もないだろうと思われる方は多いと思うが、新しく畑を造るということは様々な方面に影響がある。

 

 来年春に苗木を植え付けるということは、すでに苗木を発注しているのでそれまでに植えるための場所が確保されていなければならない。

 次に緑肥を播いたり等、土壌改良を行うために必要な時期があるのである。

 適当な場所にただ苗木を植えるだけでは上手くいかない確率の方が大きい。


 そして、資金繰りのために行政や銀行の関わる補助事業が大きな問題だ。

 着工や完了の期日があり、実に多くの書類仕事や手続きがあるのだ。

 これが煩雑で複雑怪奇、むしろ諦めさせるためにやっているんじゃないだろうかと思う。


 この手続きが遅々として進まなく、未だに必要な資材も機械も手に入っていない。


 だが、この補助事業で資金面ではかなり大きなスタートダッシュができる。

 これがなければ、よほどの莫大な資産を持っていなければ新しい畑など造ることはほぼ確実に不可能だ。


 こうして完了期日から逆算して開拓作業を進めているわけだが、このスケジュールがとんでもないのである。

 2月末が完了日であるが、僕の移住したこの地域では雪が積もるのである。

 1月、2月、年によっては12月ですら作業できるかどうかも怪しい。


 つまり、11月に粗方完了していないといけないのだ。


 この補助事業の中心は国、つまりは地方の現場事情を知らないコンクリートジャングルの住人が決めているからこうなるのである。

 このような事情があった故に、今年のワインは自分で造ることを諦めてブドウを売ったのだった。


 さて、ウダウダしていたところで畑はできない。

 今できることをヤルのみだ。


 しかしながら、秋雨のせいか天候不順、雨ばかりがよく降る。

 雨の合間を縫い、再び通称ユンボを入れた。

 

 夏場にトラクターを走らせてみて分かったが、ところどころ大穴があって走れない箇所があったので穴を塞いだ。

 仮で植え付け範囲を測ってみた時に、広さが足りない箇所があったので拡張するために伐採した木の抜根も行った。

 拡張した端っこの雑木林を切り開くと、絶壁に近い段差があったのでこの箇所も機械が入れるように均さないといけない。


 こうして着々と畑の整地を行い、ようやく伸びてきた緑肥の刈り込みである。

 しかし、天気予報になかった大雨が前日土曜日の夕方から朝方まで降り続いた。


 昼間に晴れたが、湿気を含んだ粘土質土壌にトラクターで耕すのは逆効果だろう。

 余計に土が締まり、緑肥でせっかく通気性と透水性を良くなっているはずがまた元通りになることだろう。


 本日10月1日日曜日、緑肥の刈り込み作業は延期し、事務仕事とまだ残っていた伐採を行った。


 思い通りにいかないこともある。

 これもまた人生だ。

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