7月第5週 野蛮な太陽
『アルパカ・ソーヴィニヨン・ブラン
2022
サンタ・ヘレナ』
言わずと知れたコスパ抜群の旨安ワインの代表だろう。
チリワイン=旨安ワインというイメージを作った存在だ。
ちなみに、生産者であるサンタ・ヘレナというワイナリーは、80年以上の歴史を持つ名門ワイナリーで世界50カ国以上で親しまれている。
当然ながら、他にも上級クラスのワインも生産されている。
さて、今回はこのアルパカのソーヴィニヨン・ブラン、地獄の業火に焼かれる日々だったので難しいことを考えずに気軽に飲もうということで選んだ。
適度に冷やしスッキリとした辛口、グレープフルーツを思わせる僅かな苦味と柑橘系の爽やかさである。
数百円で買える心のオアシスだ。
『豚バラの冷しゃぶサラダ』
暑い日にはさっぱりとしたものを食べたくなるのは至極当然だろうと思う。
疲労回復の効果を持つビタミンBたっぷりの豚野郎を食そう。
作り方も簡単、お湯を鍋で沸かし、豚バラ肉に火を通す。
それから冷水で冷やす。
レタスを皿に敷き、スライスした生タマネギをその上に、それから冷やした豚バラ肉を乗せる。
これだけだと物足りないので、カイワレを散らし、ミニトマトを乗せる。
仕上げにマヨネーズを軽くかけ、ポン酢で締めれば完成だ。
で、実食。
瑞々しいサラダたちで乾ききった身体に水分が染み込む。
さっぱりとした酸味とマヨネーズのまろやかさで食が進む。
豚バラ肉もまた胃に収めれば緩やかに血肉を復活させてくれる。
さて、ワインと合わせる。
ワインの持つ柑橘系の爽やかさが合わさり、さらに食が進んでいく。
あっさりと完食してしまう。
落ち着いたところでもう1杯頂こう。
いくらでもガブガブと飲める付き合いやすさ、日々の疲れを癒やし、オーバーヒートしていた脳がソーヴィニヨン・ブラン特有の香りで別世界に導かれる。
この特有の香り、どこか腋アセのような芳しさがあるのだ。
だが、この芳しさをどこか官能的に感じてしまう。
夢現の狭間、独りで呑んでいたはずがそこに見えない恋人と裸体で抱き合うかのように心のオアシスが訪れる。
日中の野蛮な太陽に焼かれたせいか、脳がバターのように溶けているようだ。
虚構と現実の狭間の世界、官能的な芳しさとともに夜が更けていく。
☆☆☆
梅雨が明け、病気との戦いも一時休戦、ブドウ畑の作業も一段落したところである。
ここらでゆっくりと落ち着いて新しい畑の開墾を再開しようと思っていた。
しかし、暑い。
アツい、熱すぎる。
梅雨があけると一変、野蛮な太陽がギラギラと攻撃的になった。
遮るもののない中、次の工程のために伐採抜根した樹木の処分をしていた。
地獄の業火に焼かれるような環境で、畑をキレイに片付けなければならないのだ。
もちろん、熱中症対策で水分を大量に持ってきていた。
アクエリアスを約6リットルのウォータージャグ、冷えた麦茶(もちろん炭酸とアルコールは入っていない)水筒1リットル、コップ代わりに500mlのペットボトル、これが一人一日分である。
むしろ足りずに近くの自販機に買いに走る日もあった。
これだけ準備を整えても、身体がまともに動いてくれないのだ。
徐々に運んで処分していくのだが、少し動いては限界を感じる前に畑の外れにある山の樹木の木陰で倒れるように休む。
身体をわずかだけ冷やし、ガブガブと水分補給する。
これを毎日朝から日が暮れるまで繰り返す。
本当は、太陽という容赦のない怒れる神のいない夜間にやれればよかったのだが、今度は危険な獣たちの活動時間だ。
ここらの山には、イノシシ、サル、クマ、という強敵たちが棲み着いている。
僕の畑でもヤツラの臭い置き土産が落ちているので、遭遇する危険性が高いのだ。
もしヤツラと鉢合わせしたらこちらはタダでは済まない。
というわけで、熱中症警戒アラートが出ている中、作業を間に合わせるためにやるべきことをやらなければならない。
まさに荒行で苦行、精神と時の部屋に入った気分で作業を地道に進める。
勝手に『GOLDFINGER '99』を口ずさみ、奇妙なテンションでDANCIN'IN THE SUN。
そして1週間後、土曜日にようやく終わった。
これでやっと次の作業に入ることが出来る。
トラクターで畑全体を耕すのだ。
トラクターの後ろに土を耕すロータリーの機械を装備して行う。
これもまた、毎度お世話になっている地元ワイナリーで借りてきた。
さて、畑へと乗り込んでやるぞ!
と思ったが……か、硬すぎる。
梅雨明けから1週間、全く雨も降らずに強烈な日に照らされ続けた地面は岩のように固まっていた。
赤土の粘土質土壌、4月の土壌診断でわかっていたはずだが、こいつは想定外のクセモノだった。
進行速度はゆっくりだができるだけ迅速に、耕す回転速度は力強く、ようやくこの地面を耕せる設定になったところで作業再開だ。
しかし、耕すスピードが遅すぎる。
しかも地面にほんの少しの段差があるとトラクターの馬力が負けてエンストしてしまう。
エンジン温度が限界に近づいたところで木陰でトラクターを休ませ、僕は休まずロータリーに絡んだ草を取る。
これを何度も繰り返し、鈍亀の速度で耕す。
日が暮れる前に終わるのだろうかと途中で気だけが焦り出したが、なんとか日が暮れる前に終わることが出来た。
これで今回の本命、緑肥を撒く段階まで来た。
緑肥は、土壌にすき込み肥料にする植物なのだが、ここの土壌改良の1つにしようというわけだ。
緑肥については次回語ることにして、今回はここまでにする。
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