7月第3週 反腐海戦線
『ジヴリ ルージュ V.V.
2021
ミシェル グバール エ フィス』
ブルゴーニュワインの中心地コート・ドールの南部に隣接するコート・シャロネーズに属するジヴリ村で造られたワインである。
コート・ドールに比べれば格付けの畑は少ないが、値段の割に高品質なワインが造られている。
あのジブリとは関係ない。
こちらの造り手グバール家では、自然環境に配慮し、化学肥料、除草剤、殺虫剤は使用せず、リュット・レゾネ(減農薬栽培)を採用している。
では、説明は早々に切り上げ開けてみよう。
グラスに注ぐと色は薄めでやや茶色がかっている。
始めの香りにやや苔のような土っぽさがあったが、ラズベリーのような甘酸っぱさやスミレのようなニュアンスがある。
味わいにはやや尖った酸味を感じるが、タンニンは控えめで飲み口は軽やかと言ったところか。
『王蟲風ミートソースのラザニアのほうれん草巻き』
ジブリとは関係ないと前述したが、王蟲のような見た目にして遊んでみた。
作り方はちょっと手間だが、それほど難しくはない。
まずはシンプルにニンニクと玉ねぎを刻んで炒め、ミンチに火が通ったらトマト缶を投入する。
今回はバジルとコンソメで軽く風味付けしてワインを少々垂らして、フタをして少し煮込む。
その間にラザニアの板状パスタを3枚茹で、ほうれん草もサッと湯通しする。
ミートソースに水っ気がなくなるまで煮込んだら、ラザニアでミートソースを巻いていく。
ラザニアが意外にもツルツルして滑るので、少々巻くのに手間取ったが、大体の形ができれば良いだろう。
頭部分、胴体、後ろ部分がそれっぽい形になったことにしよう。
そうして、湯通ししたほうれん草をペタペタ貼って、イモムシっぽくなるようにしていく。
それからミニトマトを半分に切り、マヨネーズを接着剤代わりにして貼り付けていけば完成だ。
見た目は王蟲だが、味は普通のミートソースパスタだ。
それでも上手くできれば美味いことは美味い。
ワインと合わせるが、無難でハズレではない。
見た目はアレでも、味付けはシンプル・イズ・ベストだ。
今回のワインがジヴリだったので、ちょっと遊んでみた。
だが、現実世界にあの腐海が誕生してしまったらとんでもない事態である。
ブドウ畑で放ったらかしにしていたらあの腐海のようになるので手入れは本当に大事なのだ。
☆☆☆
前回はブドウの傘かけについて語ったと思う。
今回は厄介な病気について語ろうと思う。
梅雨入りして1ヶ月が過ぎた。
しかし、まだ梅雨明けはされず、どんよりとした空模様で不安定な天気が続く。
非農家でも気が滅入る人は多いだろう。
しかし、こんな時に元気なヤツラがいる。
病原菌である。
ブドウの主要な病気に、晩腐病や灰色かび病、黒とう病、べと病などがある。
他にも様々な厄介な病気があるが、この梅雨時期に問題となるのがべと病だろう。
こいつは糸状菌によるカビであるが、その被害は放っておくと甚大になる。
葉に黄色い斑点が現れ、やがて裏側に白いカビが生えて、酷くなると葉が枯れ落ちる。
実では白いカビが生え、黒ずんできてやがて腐り枯れ落ちていく。
べと病は低温多雨の時に発生し、風雨にさらされるとさらに感染拡大していく。
ジトジトジメジメ、コイツラは梅雨時や秋雨の時期の夜間や早朝の肌寒いぐらいが大好物だ。
大発生したら、壊滅する畑が出るほど危険な連中だ。
灰色かび病もまた似たような性質があり、灰色のカビがモサモサとして実を腐らせてくる。
良い条件であれば超甘口の貴腐ワインとなることもあるが、この時期ではただ腐るだけだ。
他にも特に厄介なのが晩腐病で、大発生したらほんの2~3日でその畑は壊滅する恐ろしいやつだ。
コイツの発生時期にはまだ早いので、今は触らないでおこう。
黒痘病は今のところ被害は特にないので今回は触れない。
さて、これまでの説明でお分かりだろうが、現在べと病が少し出てきてしまっている。
コイツへの対策としては、防除、農薬の散布で事前の予防が最も有効だが、これだけ不安定な天候だと予定通りに作業ができないことが現実だ。
病気になった部分を除去してあげること、後は、畑をスッキリと風通しを良くしてあげることも大事である。
前々回の副梢取りがその例だ。
月曜日のことであるが、曇で雨の降らない予報であったが、降ったり止んだりを繰り返されてしまった。
朝方、先週の残りの傘かけを終わらせ、さあ農薬を撒くぞ、と思っていたらいきなりの雨にやられた。
その後の予報だとずっと降らないはずだったので、草刈りをして畑が乾くのを待った。
雨で濡れて流れてしまうと、農薬の効果が激減してしまうからだ。
すぐに日が出てきて無事に乾いたので、農薬を撒いたのだが、終了直前に予報にない想定外の突然の雨が来てしまった。
あ、終わった。
そう思いながら、翌日に畑で病気になった粒を除去しながら見回りをしていった。
元々多く出ていた部分はやはり多いが、他のところではそれほどでもなかった。
総量としては20kg弱、全体の1%以下なので誤差の範囲内といったところだろう。
想定よりも被害はまだかなり少ないようだ。
どうやら、傘かけが終わっていたからか、雨に流されずにすんだのだろう。
ホッと一安心だ。
しかし、油断は禁物、病原菌の強さは人間の想定など遥かに超える厄介な相手なのだ。
いまだ梅雨は明けず、この週も雨が降ったり止んだりが続く。
今はまだヤツラの攻勢が続いている。
だが、梅雨が明けて温度が上がり、空が晴れ渡り湿度が下がれば、コイツラの活動は一旦休止される。
今は、梅雨明けまで我慢の時である。
この厄介な雨季のある日本で無農薬栽培をしようモノならば、そこに腐海が誕生することは間違いない。
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