7月第2週 傘かけ部隊(1名)

『フェアヴァレー シュナン ブラン

 2022

 ザ フェア ヴァレー ワインカンパニー』


 南アフリカで非白人労働者によって初めて誕生した、アパルトヘイト撤廃後の象徴とも言える革新的なワイナリーである。

 今回は、南アフリカを代表する品種シュナン・ブランで造られた辛口白ワインを試してみようと思う。


 開けたての頃は、なかなか香りが立ち上ってこないので少し置いてみた。

 ラフランス程の香り高さではないが、洋ナシ系統の風味を感じる。

 味わいにパイナップルのような南国系の味わい、後味に残る苦味が良いアクセントになっている。


 総合的に考えればコスパの良いワイン、ワイナリーのバックグランドにある重苦しさやワインのくだらない作法を気にせず、気軽に楽しめるタイプの明るいワインだと思う。


『チヂミ』


 まだまだ忙しいので、今回も簡単レシピで時短だ。


 ニラを3センチぐらいに刻み、ニンジンも同じぐらいの長さになるように千切りにする。

 簡単に水と薄力粉を混ぜ合わせ、小さじ1杯分ぐらいの中華ダシを目分量でざっくりと追加してさらにかき混ぜる。

 ここに刻んだニンジンとニラ、こま切れ豚肉を投入してさらに混ぜ合わせる。


 ごま油を熱したフライパンに伸ばしながら一面に広げて焼くだけだ。

 この間に、ポン酢、コチュジャン、ごま油をお好みの比率でブレンドしてあげればソースも準備はオーケー、フライパンの中身も焼き上げれば完成だ。


 さて、実食。


 だが、適当に混ぜて焼いただけなので量が多すぎてチヂミよりもお好み焼きみたいになってしまった。

 味もカリッとしていなくてモチモチの食感、だが、コレはこれでありだと思うことにしよう。

 ソースのピリ辛感が食欲を増進させるので細かいことは気にしない。


 さて、ワインと合わせよう。


 どこかふくよかでフルティーさがあるワインなので、コチュジャンの辛味を上手く和らげてくれる。

 手抜き料理でもワインと合わせれば十分な一品となることができた。


 これもまた、ワインの妙というやつだろう。


 公私ともども、時間との戦いで忙しい時は完璧を目指さなくとも良い場合もある。

 百点を目指して制限時間に間に合わずに全てができないよりも、80点で良いから全てをやり遂げる方がマシなのだ。


 これは多くの事で共通ではないだろうか?


☆☆☆


 前回は大忙しで、様々な作業について語ったと思う。

 今回はその作業の次の段階について語ろう。


 房の整理をする摘房をひたすら月曜日にやっていた。


 しかし、出稼ぎに行っているワイナリーのオーナーから、苗木の防除が追いつかないから来てくれないかと呼ばれてしまった。

 梅雨の晴れ間で絶好の作業日であったが、持ちつ持たれつ、困った時はお互い様の精神で火曜日はほぼ丸々一日を自分の畑から離れることになってしまった。


 摘房も7割以上は終わっていたが、全部やり切る前に次の作業に移ることにした。

 今週末に雨の予報があるからだ。

 ブドウの房の雨除け、傘かけという作業を前倒しですることになった。


 日本はワイン用ブドウの産地として他国に比べて不利な環境にある。

 その理由として、栽培期に梅雨と秋雨という雨季が二度もあるからだ。


 ブドウもそうだが、他の作物も雨ざらしで湿気を帯びてしまうと様々な病気が発生し腐りやすくなる。

 そのため、病気のリスクを軽減するために日本という国では雨対策が必須となる。

 

 ビニールハウスが簡単で有効だが、設備を設置するのに大きな資金が必要となる。

 ハウス設備が無ければ、ブドウの房に一個一個、蝋引きした紙で傘をかけてやらないといけない。

 この作業が傘かけである。


 この作業がこれまた地道で果てしない。

 もし1トンの収穫量を想定するなら、1房200グラムとして5千枚必要となる。

 やったことがあればすぐに想像できるだろうが、簡単にできることではない。


 僕の畑では、大体2トンで1房180グラムを想定していたので1万枚準備し、多分1千枚か2千枚は超えるだろうから足りない分は近くのJAか農業資材専門店に買い足しに行けばいいだろう。


 そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。


 始めの1千枚をやってみたところで、よし全然足りないと気がついた。

 多分、5から6千枚は追加でいるだろう。

 想定収穫量を2.5トン前後に上方修正、すぐに追加発注をかける。


 そして、作業を再開していく。


 この傘かけという作業はとにかく時間との戦いだ。

 雨に濡れる回数が少なければ少ないほど良いので、適期に一気にやらないといけない。

 

 日が昇って日が暮れるまでひたすらカシャカシャとブドウの房に傘をかけていく。

 無我の境地に入り、肉体の限界のスピードで動く。

 完璧にやっていたら確実に終わらないので、多少雑でも速さが重要だ。


 僕は一日に5千枚のペースでやっていたが、大概の人は1日に5千枚やれと言われたら途中で心が折れると思う。

 noteで1千枚の束を公開することにするが、かなりの分厚さでなかなかの重量感だ。

 

 水曜日の夕方、想定外に雨に降られてしまった。

 4千房分しかできていなかったので、残念である。


 ただ、大した雨量ではなかったので、翌日木曜日から作業は再開した。


 そうして傘をひたすらかけるマシンと化していたが、追加注文が届く前に金曜日の早朝作業で傘紙が足りなくなってしまった。

 で、急遽いつもお世話になっているワイナリーに借りに走る。


 再び傘かけマシンとなり、1万2千枚近くで摘房した場所はとりあえず終わった。

 そこからは、摘房と傘かけを交互に行い、少しでも多くの房に傘をかけていく。


 やがて、暗くなって見えなくなった頃に作業を終了した。

 この時点で8割は超え、1万3千弱の房には雨よけをすることができた。

 これで想定収穫量2トン以上は良いタイミングで守りに入ったわけだ。


 土曜日は予報通り早朝から雨が振り続けた。

 まだ終わらない梅雨であるが、急がないといけない作業には終わりが見えた。

  

 できる時に頑張ったお陰で、雨降りでも余裕を持って休むことができる。


 そうして、本日日曜日、どんよりとした空模様で高温多湿、まさに病原菌にとって最高の日である。

 とりあえず、摘房を全て終わらせ、少しでも風通しを良くして房を乾かす。

 それから傘かけだが、ほんのちょっとだけ終わらないだろうな、と昼休憩しながら今この話を書いている。

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