6月第2週 フロンティアスピリッツ

『クヌンガ ヒル シラーズ カベルネ

 2019

 ペンフォールズ』


 オーストラリアを代表し、世界最高峰のワイナリーの1つに数えられている。

 アイコンワインであるグランジは、20世紀における最も偉大なワイン12本に選出されている。

 今回はシラーズとカベルネ・ソーヴィニヨンの伝統的なオーストラリアンブレンドを試してみようと思う。


 開けてみるとダークな色合い、開けたては一瞬還元しているような違和感があったが、少し空気に触れさせそうとグラスに放置していたら消えていった。

 香りにはよく熟したベリー系やカシスのような甘さが漂う。

 味わいにもダークチェリーのような甘みの強い果実や樽由来のチョコレートのような甘さ、舌にピリッとくる刺激的なスパイシー感もよく出ている。


 実にオーストラリアらしい熱風を感じる濃厚な赤ワインだ。


『チーズハンバーグ』


 身体が疲れている時には肉を食べて疲労回復だ。

 簡単にステーキにすれば良いのだが、日本だと塊肉の方が高いからハンバーグにしようと思う。


 作るのはちょっと手間だがそれほど難しくはない。


 玉ねぎをみじん切りにし、牛豚の合い挽き肉にコンソメ塩コショウ、ナツメグ、パン粉、牛乳を入れて溶き卵と混ぜ合わせるだけ。

 その後、形を整えて焼けばハンバーグの出来上がり。


 これだけではつまらないので、ソースも作ろう。

 トマトケチャップ、中濃ソース、酒の代わりにワインをグラスから一垂らし、牛乳を軽く煮込めば良い。


 この上にスライスチーズを乗せ、付け合せのサラダで彩りも良くなれば完成だ。


 ふっくらジューシーなハンバーグにまろやかでコクのあるチーズとソースが絡み合う絶品となった。


 そして、ワインと合わせる。


 これがたまらない。


 濃厚なシラーズカベルネは、まさに肉と良く合う。

 肉付きの良い甘みとスパイス感のあるシラーズがジューシーなハンバーグと、骨格がある重厚なカベルネはソースとの相性が良い。

 旨味の洪水とともに、日々の重労働に痛めつけられた筋繊維を蘇らせてくれるようだ。


 食はまさに生命の源、労働のエネルギーとなる気力と体力を支えてくれるのだ。

 、それほどのカロリー摂取をして開拓時代の魂を感じる。 


 明るくなりだした頃に目覚め、日が暮れるとともに1日を終える。

 これが大地とともに生きるということなのだろう。


☆☆☆


 先週は誘引作業について語り、小型の農機具たちを手に入れたことを報告した。

 今週は早速、それらの武器たちが大活躍となった。


 しかし、武器たちが手に入ったとはいえ、その保管場所のためのスペースがそれなりに必要となる。

 小型の農機具とはいえ、通常のアパートでは置き場所に困るのだ。


 で、引っ越しをしようとしているのだが、畑近くの部落に空き家があるのでそこに来月から引っ越すことになった。

 だが、まだ契約書ができていないので住むことはできないが、農機具小屋は使わせてもらうことはできた。

 

 できたわけだが、しばらく放置されていたので前庭の草が伸び放題になっていた。

 そこでまずは草刈りから。


 どこに何があるのかすら分からない状態だったので、ナイロンテープ式のアタッチメントに付け替え草刈り開始。

 出てくるわ、大きな石やコンクリートブロック、投げ捨てられた鉢植えにプラスチック片、それらを薙散らしながら進んでいったが、刈払機の動きが悪くなり止まってしまった。


 草でも絡まったのだろうとアタッチメントを外して草を取ろうとしたのだが、びくともしない。

 数時間程、あれやこれやと格闘し、ようやく外れた。

 良かった、いきなり壊れたらシャレにならない事態だった……

 

 外してみると内部にびっちりと草やらブルーシートの繊維が絡まっていたのだ。

 これでようやく快適に動くようになったわけだが、キリの良いところで終了。

 今はここに時間を使う余裕は無いのだ。

 

 今週の本題は、樹木の伐採、畑の開墾なのである。


 空き地となっている畑で来年苗木を植え付けする予定になっているのだが、一部分にまだ雑木林が残っている。

 この雑木林を切り拓こうというのだ、自力で。


 先週届いた武器の1つ、チェーンソーの出番である。

 出番となるのは主に太い木にしようし、細い木は両手の刈り込み鋏で行う作戦だ。


 一部分とはいえ、ざっと10m×50mの範囲にびっしりと大小様々な木々が数百本生えているので、意外と時間がかかる。


 今年分の工事範囲外だが、ちょっと試しに杉の巨木を切り倒してみた。

 1本だけだが、巨木となると時間がかかってしまった。

 しかし、倒れる瞬間の爽快さはたまらない。


 昔の開拓者は、これを斧やノコギリ、ナタなどの手作業道具だけだっただろうから恐ろしい話だなと思ってしまう。


 こうしてひたすら地道に今年分の植え付け範囲を切り拓く。

 

 だが、他の畑も見ないといけないし、出稼ぎに行かないといけないので毎日一日中出来るわけではない。

 しかも、毎日12時間以上も肉体労働をしているとエネルギー切れで身体が動かなくなる時もある。


 そういう時は無理しないで、ちょっと早めに切り上げ、第三のビールを栄養剤代わりに燃料補給して早めに寝る。

 世の中はカロリーカットを謳っているが、僕にとってはカロリーは重要な燃料なのだ。

 よく食べよく寝る、これが壊れない秘訣なのだろうかと思う。


 だがしかし、想定外ということは常に起こるものである。


 もう1つの畑のブドウが開花してしまったのだ。

 全体よりも先行してちょっとだけ咲いた状態、ここが農薬散布のタイミングとなる。

 コレを逃すと病気発生のリスク大となるので、開拓を中断することになった。


 金曜日の午前中は雨だったので、事務仕事をして雨の上がったタイミングを見計らって畑へ出る。

 房周りの葉っぱの整理をし、農薬のかかりが良くなったところで準備は完了。


 翌早朝、無事に農薬散布を終えることができたのだった。


 今週中に木の上部分の伐採を終えたかったところだが、仕事には優先順位がある。

 開拓は来週に持ち越しとなった。

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