5月第4週 雨ニモマケズ

『メルロー 20バレル リミテッド エディション

 2016

 コノスル』


 南米を代表するチリの大ワイナリーである。

 イノヴェーション(革新的であること)を理念に、サステイナブル農法や有機栽培の実践など、時代に先駆けて様々な取り組みを行ってきた。

 リーズナブルな価格で高品質な高コストパフォーマンスは、日本でも有名なところだろう。


 今回は、特に条件の良い畑の葡萄を使用した「20樽限定」という名の上級シリーズ「20バレル」シリーズのメルローを開けてみよう。

 実際には、他の品種も僅かながらブレンドされているが、ワイン法でこのラベル表記は認められているので細かいことは気にしなくて良いだろう。


 濃いルビーのような色合い、自転車マークのカジュアルタイプとは違い、明確に濃厚さを予測させる。

 香りには甘さのあるベリーのような感じ、樽の木の風味が重さを支える。

 味わいはよく熟したジャムのような雰囲気、スパイシーな刺激もある。


 やや獣の血のような生臭さを僅かに感じたが、インクのような濃さで重厚感と高級感を感じる1本だろう。


『トスターダ』


 トルティーヤを焼いて(トースター)パリパリにしたものに、好みの具をのせて食べる代表的なメキシコ料理のスナックだ。

 今回はオーソドックスな具材を使う。


 鶏胸肉を塩とたっぷりの水で茹でる。

 火が通ったところで、冷まして手で細かく割いていく。

 パリパリになったトルティーヤの上に散らす。


 次に、トマト、アボカド、レタスを刻み、フレッシュチーズを鶏肉の上にトッピング、塩コショウで味付け。

 ソースはお好みになるが、ケチャップ、マヨネーズ、おろしニンニク少々、軽くレモン汁を振って完成だ。


 パリッとした食感のトルティーヤ、サラダのジュワッとしたみずみずしさが軽やかな口当たりで楽しませる。

 タンパクな鶏肉なのに、チーズとソースのまろやかさが濃厚な味わいをまとわせる。

 これにチリペッパーを少々ふりかけてあげれば、さらにメキシコらしさが出てきた。


 手づかみで食べる気軽さ、スナックというよりもファーストフードだと思う。


 ワインと合わせる。


 が、トルティーヤに対して、中の具材が多すぎたようだ。

 一口かじるとあちらこちらから、ソースやら肉やらが溢れる。

 

 ワインとの味わいに集中する暇がなかった。

 忙しく食べ、忙しなく飲んだ。

 気がつけば完食、腹も満たされていた。


 これもまた食事だろう。


 落ち着いて味わう暇もない。

 仕事もまた同じだろう。

 

 畑に出れば、気がつけば日が暮れている。

 そんな日もある。


☆☆☆


 前回は第2回の芽かき、というよりも『元気があれば何でも出来る』の真実について語ったと思う。

 今回もまた、気合と根性(笑)について語ろうと思う。


 カクヨムでは触れていなかったが、noteのラストで次週の予定についてほんの少し仄めかした。

 草刈りと農薬散布のことである。


 前回に草刈りをしたのは約4週間前、それなりに草が伸びて来ている。

 この間にそこそこの雨も降り、気温が高い日もそこそこあった。

 当然だろう。


 伸びた草は虫どもの棲家となり、葉も少し食われ出してきた。

 で、草刈りというわけである。


 だが、基本的に明るい時間のほとんどは出稼ぎに行っている。

 そのため、自分の時間は限られている。


 日が傾いている夕方から乗用草刈機モアに乗って出動だ。

 例によって、出稼ぎ先の地元ワイナリーで借りてきたが。


 この日は曇りだったので、暗くなり出した頃に終了。

 帰るまでが仕事なので、近くの田んぼに落ちないようにライトを付け気をつけて運転だ。


 これで厄介な虫どもは、一時的にだが強制退去と虐殺でスッキリだ。


 草刈りは面倒な仕事ではあるが、草は草で実は有益な部分もある。

 地中に根が張っているので、土中の通水性や保水性、通気性などに貢献してくれる。

 また土壌中の有益な微生物の活動にも影響を与えるのだ。

 他にも草の種類によって様々なメリットがあったりする。


 除草剤を撒けば草刈りをしなくて作業は楽になるが、良いぶどうを作ろうと思えばこその苦労でもある。


 他にも、早朝や夕方の空き時間にブドウ棚の上をキレイにしていく。

 元の所有者が残していた暦年のブドウの巻き蔓の除去だ。

 この巻き蔓に様々な病原菌が潜んでいるからだ。

 

 これが地味で地道で時間だけはかかった。

 4月の初めから少しずつ行い、ようやく今週に終わることができた。

 本来ならば芽吹き前に終わらせたかったが、この時期でもやらないよりはマシだ。


 そして、ブドウの生育状況と天気を考え、ちょうど良いタイミングを見計らって農薬散布を行う。

 3回目の農薬は、展葉(葉っぱが開いた状態)10枚が目安となる。


 だがしかし、天気予報を信じて土曜日に行う決断をしたわけだが、前日に予報が変わり夜中に少々雨が降ってしまった。


 翌早朝、日が昇り始めた頃に畑に出動したわけだが、雨露で新梢たちが濡れていた。

 この濡れた状態で農薬を撒いても効果が低減してしまうのだ。


 で、諦める?


 いや、ここで諦めたら試合終了、というほどではないが、絶好のタイミングを逃すことになるだろう。

 次の2日間は雨、さらに次週は晴れ間の少ない予報(当たるかは不明)なので、病気発生の高リスクと隣り合わせになる。


 僕はここで諦めずに、雨露を気合と根性で落としていった。

 これが脳筋な力技で、ブドウ棚を揺すって水滴をある程度落としていったのだ。

 たとえ、自分の身体が濡れようとも、気合と根性だ。


 それから昇ってきた陽の光で乾きやすくし、2時間ほど待った。

 畑の面積がそれほど広くないのでこのやり方でやったが、広ければ農薬散布機スピードスプレイヤーの送風ファンだけを回して風の力で乾かすやり方もある。


 そして、この甲斐があってか、8時頃には無事に雨露は乾いていた。


 こうして無事に雨ニモマケズに農薬散布は終了したのだった。

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