期限付きの恋

@bungakudaisuki

第1話 あの少女

 俺は、心臓病だ。余命一年、そう医者から告げられた時、家族がその理由だと自分に言い聞かせた。俺は、昔から弱くて運も悪い。いっつも何か不吉なことを言うと、それが当たり前のように帰ってくる。


 ある日、健康診断を受けた。医者から、「非常に残念ですが、余命一年です。」と言われ、父と母は泣きじゃくりながら話を聞いた。俺はまだ高校一年、高校すら卒業もできないのか。俺は医者に「ここからはお父さんとお母さんしか聞かなくていい話だから、外で待ってなさい。」と言われ、部屋を追い出された。


 その時、オレンジ色の髪をした少女がエレベーターから降りて、白い部屋に入っていた。そこには、『休憩室』と書いてある看板が掛けてあった。俺はそっと部屋に入り、そのオレンジ髪の子を観察する。自分の世界に入り込んでいるよう。彼女はスケッチブックに、色鉛筆で花の絵を描いていた。「出来た!」と彼女は笑いながら俺に話しかけた。


 さっき見たあの薄暗い泣きそうな顔よりも、こいつには笑顔が似合うな、と俺はクスッと笑った。それにしても、彼女は絵が上手い。写真のように、綺麗な光の当て具合が出来ている。俺も、スケッチは出来るけど、それほど上手くない。「何でここに居るの?」と俺が聞くと、彼女は黙り込んでしまった。「嫌なこと聞いちゃった?」俺が心配そうな顔で言うと、彼女は可愛い声で、「別に」と答える。「昔から病弱だからずっとここに居るの」小さい声で、彼女は笑う。偽の笑いか?俺は思う。きっと辛いんだろうな。「また来るね。」俺が言うと、彼女はまたにっこり笑い、俺は休憩室から出て行った。

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