悲鳴の聞こえるBar

綴。

第1話 悲鳴の聞こえるBar

 小さな街にあるBar。

 俺がバイトをしているこのBarでは、時々悲鳴が聞こえてくる。



 メニューは生ビールから、スタッフ考案のカクテルまで様々揃っている。

 ごくごく普通のBarだ。



 シーズンのイベントで、スタッフはそれぞれ考案したカクテルを店長へプレゼンをする。

 採用されれば、メニューに並ぶのだ。



 去年のハロウィンの頃に俺の考案したカクテルがメニューに並んだ。

 イベント向けのメニューは、イベントが終わるとメニューから姿を消す。


 だが、俺の考案したカクテルはメニューの片隅に残された。



「お待たせ致しました。ご注文のカクテルです!」

 俺は自慢のカクテルをテーブルへ運ぶ。


 運ばれてきたカクテルを見た客は、

「えっ?これ?」

「なんかうまそうだなぁ!」

「ちょっと可愛くない?」


「あら、キレイ!」

「おっ?これ?」

と反応するのだ。


 携帯でカクテルを片手に写真を撮る女子もいる。


 そんな会話を聞きながら、俺はカウンターへと戻り仕事の続きにとりかかる。



 さっきのテーブルは何故か全員で頼んでいたなぁ。



 そろそろ聞こえてくる頃だ。



「ウギャ――!!」

「なんじゃこりゃーー!!」

「ギャップがヤバい……」


「ギャ――――!!」

「ひぃ――!!」


 その悲鳴は、店の外にも響きわたる。


 ショットグラスにトマトジュースとテキーラを入れて、タバスコを入れる。


 タバスコは数滴……ではなく、

 バババババ……とその時の気分で。

 バースプーンでしっかりと混ぜる。


 トッピングに粗びき胡椒をパラッとのせて。

 ショットグラスの淵にカットレモンを飾る。




 メニューの片隅に残された、俺の自慢のカクテル。


【罰ゲームにいかが?】


 そのカクテルの名前は。


――――ドラキュラ――――



 今夜もまた、悲鳴が聞こえてくる。





―― 一話完結です。 ――

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悲鳴の聞こえるBar 綴。 @HOO-MII

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