第10話
<クラエ>に兵士たちが襲い掛かる。
彼は竜を召喚し、兵士たちを退ける。
黄金竜〈ゴルバゼハイド〉が剣で襲い掛かる兵士たちを踏みつけ、新たな色を生み出す。それはまるで輝く砂のよう。
赤き竜〈ヒヒイロドグマ〉が木々に隠れる兵士たちを食い荒らし、新たな色を生み出す。それはまるで燃える炎のよう。
青き竜〈ドラグネルシズ〉が槍を投げる兵士たちを投げ飛ばし、新たな色を生み出す。それはまるで深い海のよう。
翡翠竜〈エメラルダロイド〉が弓で射る兵士たちを薙ぎ払い、新たな色を生み出す。それはまるで若木の緑のよう。
黒き竜〈クロヴォルケイト〉が大砲を打つ兵士たちを咆哮で吹き飛ばし、新たな色を生み出す。それはまるで夜のよう。
鮮やかな色が、兵士たちの血で染め上がっていく。
<クラエ>は鮮やかな血の海を走り、黄金の王〈グリムニケリスト〉に斬りかかる。
ケタケタと笑う彼の拳で剣を弾かれる。硬い拳を持つ黄金の王を殺すには彼には難しかった。
しかし、そこへ黄金竜〈ゴルバゼハイド〉が飛び掛かる。
黄金の王を踏みつけ、その頭を鋭い牙で引きちぎった。
黄金の血が飛ぶ。
<クラエ>は黄金の血を浴びながら、次に緑の王〈ジルクスメギト〉に斬りかかる。
ゲラゲラと笑う彼は素早く、数多の鎖で<クラエ>の身体を縛り付けた。身動きがとれなくなってしまった。
しかし、そこへ翡翠竜〈エメラルダロイド〉が飛び掛かる。
その大きな両手で緑の王を捕え、真っ二つに身体を引き裂いた。
緑の血が飛ぶ。
<クラエ>は鎖を解き、黄金と緑の血で染まりながら再び走る。
向かうは、黒の王〈ドルヴェールオルガ〉がいる城へ。
竜たちと共に向かう。
走るたびに鮮やかな血が飛び散る。
それでも彼は足を止めない。
彼は必ず果たすと心に誓ったからだ。
黒の城で、黒の王は待っていた。
剣を構え、やってきた<クラエ>に襲い掛かる。
剣と剣がぶつかり合う。
火花が散り、重たい音が響く。
「<クラエ>
お前は何故 戦いを変えてしまったのか。
お前は 私の兵士だったはずなのに。
どうして 何のために戦う?
死ぬために戦っているのではないのか?」
黒の王の問いに、<クラエ>は叫んだ。
「生きるために、戦っているんだ!」
二人の剣がお互いの腹を突き刺す。
黒い血が二人の腹から飛び散る。
黒の王は倒れ、<クラエ>は腹を抱えながら立ち続けた。
そこへ現れたのは、白き竜〈ユエナホーチス〉。
転がった黒の王の身体を喰らう。
白き竜〈ユエナホーチス〉は誰にも染めることができない。
<クラエ>は己の黒い血を見ながら、白き竜〈ユエナホーチス〉を見る。
その目は、優しい青色をしていた。
「死にたく、ないなぁ」
彼の血が、黒から赤に変わる。
黒い城は、白を帯びた色に変わっていく。
ああ、これで。
彼は血の海に倒れた。
深い眠りが彼を襲う。
このまま寝てしまおうか。
瞼が閉じられようとした時、彼の目の前に降り立ったのは白の王〈ユエルミハニス〉。
白の王は彼の身体を抱きかかえ、微笑んだ。
「勇敢な騎士よ、お前の願いは叶えられた。
この世界は、再び色鮮やかな、良き世界になるだろう。
そして、お前の死は、決して望まれていない」
白の王は白き竜〈ユエナホーチス〉に命じた。
白き竜〈ユエナホーチス〉は<クラエ>を喰らった。
そして、白き竜〈ユエナホーチス〉は、青い目をした黒銀の竜<クラエオルリガ>と姿を変えた。
彼は飛び立った。
愛する彼女の元へ。
彼が空に舞う頃には、世界は色鮮やかになっていた。
海や空は青色に。
森林は緑色に。
山は黄金色に。
太陽は燃える赤に。
夜は黒に。
月は白となった。
金色の乙女<シエルニエス>は、黒銀の竜<クラエオルリガ>を迎え入れ、再び出会えたことを喜んだ。
愛しい彼、愛しい君、また会えた。
約束は守られた。
二人の愛は、永遠となった。
やがて彼らは神話となり、世界の創造主となる。
この長きに渡る戦争は、「虹色戦争」と名付けられた。
さて、この物語を信じるか信じないかは、君次第――
虹色戦争 玻璃青丹 @Hariaoni
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