第28話 盗賊討伐

「マイムマイムであるか?」

「そうそう、皆でお手々つないでって、違ぁーうっ!」

「中々の乗りツッコミであるな」

「褒められてもうれしくねぇよっ!」


 中々の出し物であるな。


「残念ではあるが、こんな所で営業しても客は取れぬであるぞ。 コメディアンよ」

「ちげぇよっ、盗賊だよ!」

「なんだ、盗賊を演じるコメディアンであったか。 勘違いしてすまぬな」

「盗賊だって言ってんだろうがっ! 本物の盗賊であって、コメディアンでも何でもねぇ!」

「ふむ、それでは証明する物は所持しているのであるか?」

「えっ? 証明書? いや盗賊だし、証明する物なんて何も持ってやしねぇし」

「では盗賊の偽者であるな」

「えっ? そうなるのか?」

「営業は別の所でやるのである」

「あっ、いや、俺達は盗賊でザイール商会の馬車を襲うって仕事が…」

「この馬車は我のモノなのである。 しかも我はザイール商会になんて所属していないのである」


 何だかコメディアンが困惑しているが、まぁ我には関係ない事であるな。


「道をあけて我々を通すのである!」

「いやいやいやいや、待て待て。 俺達の目的は、その馬車を襲う事なんだ。 だから荷物を全て差し出して「てい!」うぎゃぁぁぁっ!」


 あっ、しまったのである。 思わずはたいてしまったのであるが、コメディアンはピクピクしていて息をしていないのである。


「ふむ、見なかった事にするのである」


「ちょっとまてやぁぁぁーっ!」

「ザクスのかたきだ! 神妙にしやがれっ!」

「荷物を素直に差し出せば命までは取るつもりはなかったが、許さねぇ! 手前てめえだけは必ず殺してやるっ!」


「てい! てい! てい! てててててい!」


「うぎゃっ!」「げぼっ!」「ぐはっ!」「うがっ!」「あばっ!」「べふぉっ!」


 うむ、思わずカッとなって殺ってしまった。 後悔はしていないのである。


「今何か物音がって、うわっ! 殺戮さつりく現場っ!」

「ちょっとした手違いなのである」

「ちょっとした手違いで民間人を殺さないで下さいっ!」

「安心するのである。 此奴こやつらは偽者にせものの盗賊なのである」

「えっ、偽者? 盗賊? 偽者の盗賊って何なんですか?」

「分からないのである。 盗賊のフリをしたコメディアンの様な何かであるな」

「意味が判らないんですけどぉ!」

「安心するのである。 我にもサッパリなのである」

「自慢気に言い切るんじゃねぇよっ!」


 何だか細かい事を気にする奴であるな。


「細かい事を気にし過ぎるとハゲるであるぞ」

「私は今すぐハゲそうだよっ!」


「それよりどうするんですか。 街道に死体を置き去りになんて出来ませんよ。 騎士を呼ぶ余裕なんてありませんし、放置したら獣が寄ってきて通行人の迷惑になります」

「ふむ、つまりは証拠の隠滅いんめつを計れと?」

「いや、盗賊の討伐なら証拠の隠滅なんて必要ないですし、処分さえ出来れば問題はありませんよ」

「要するに跡形もなく吹き飛ばせば問題無いのだな。 エクスプロー「ちょっと待ったぁ!」」


 ぬぅ、どうして止めるのであろうか?


「ああ、そうであるか。 エクスプロージョンでは肉片が残る可能性があるであるかなら。 ならば、ヘルファイ「だから待てって!」」


 一々五月蝿うるさいいであるな。


「何が不満なんだ」

「貴方そのまま吹き飛ばそうとしたでしょ!」

「いや今回は全てを燃やし尽くそうしただけであるぞ」

「その場合、この街道はどうなります?」

「何をバカな事を言っているのであるか。 ヘルファイヤなら、地面すらも燃えて火の海になるに決まっているではないか」

「我々が通れなくなるって言っているんですよっ!」

「そんなのは、我が馬車ごと放り投げればすむ事であろう?」

「投げようとすんなっ!」


 本当に我侭わがままでであるな。 子供の頃に高い高いで成層圏まで放り投げられた経験が無いのであろうか?


「死体は全て道の端にでも移動して、小さな炎で燃やして下さい」

「ぬぅ、面倒であるな」

「ほら、死体運びなら私も手伝いますから、さっさと始めますよ。 今日中に宿場町まで行きたいんです」

「ぬぅ」


 何とか死体を道の外へと運び出し、小さな炎で焼却する。


「ティンダー。 ぬぅ、これでは骨が焼け残ってしまうぞ」

「良いんですよ、別に。 コレは盗賊の死体処理なんでしょ? 今更民間人だったなんて言わないで下さいね」

「ふむ、自称盗賊であったから問題なかろう」

「それじゃあ何で盗賊の偽者なんて呼称したんですか?」

「盗賊を証明する物を所持していなかったのである」

「いやいやいや、盗賊を証明する物なんてありませんよ」

「それでは冗談で盗賊だって言った場合は殺しても問題無いのであるな」

「いや、その場合は殺しちゃダメでしょ」

「ぬぅ、難しいのであるな」

「いや、あんたの事を理解しようとするより簡単だよ」


 なんともひどい言われ方をしている気がするのである。


「さぁ、そろそろ出発しましょうか。 思いのほか時間を浪費しましたし」

「ぬぅ、一言良いであるか?」

「何ですか?」

「ココに急速に近寄ってくる集団がある様なのだが、皆殺しにして良いのであろうか?」

「えっ? それは一体?」


 そんな事を言っていると、一本の矢が飛んできて地面に突き刺さった。


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修行し過ぎた魔王、世界を漫遊する かんら・から @kanra-kara

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