第27話 盗賊
「さっさと馬車を選ぶのである」
「だから適当なのが見つからないんですってばっ!」
馬車を選ぶだけなのに、ちっとも意見が
「どのような馬車がよいのであるか?」
「そうですねぇ。 あっ、今あそこを走っている馬車なんかはいいですね。 見た目は地味ですが箱馬車ですし」
「ふむ、アレであるな。 ちょっと待っているのである」
「えっ? ちょっと! 何をするつもりなんですか?」
何だか慌てている様であるが問題無いのである。 ちょっと借りるだけなのであるから。
ささっと箱馬車の前に躍り出て、威圧を放つ。 すると馬車を引く馬が失神して倒れてしまったのである。 ふむ、まぁ良いか。
「馬車を明け渡すのである!」
「何だあんたっ! 急に馬車の前に出てきて。 今は馬が倒れてそれどころじゃないんだよっ!」
「脳筋めっ! 王族を輸送するためにこの馬車は徴収するのである!」
「無茶苦茶言ってんじゃねぇ! ザイール商会の「ふん!」ぎゃぁぁぁ~っ!」
何だか喚いている御者を遠くへ放り投げ、馬車の扉を強引に開け放つ。 すると男2人と女1人が怯えるような目で睨みつけてきた。
「馬車を明け渡すのである!」
「この馬車はザイール商会の物よっ! こんな事をして「ふん! ふん! ふん!」きゃぁぁぁ~っ!」
乗客も何だか騒いでいたが、これで馬車を確保出来たのである。 うむ、我の様な優秀な冒険者にかかれば、馬車の確保なの余裕なのでなる。
倒れている馬を「起きないと食べるぞ」と説得するとちゃんと起き上がったので、引っ張って依頼主たちの下へと引っ張っていった。
「馬車を確保したのである!」
「なんつー事を…。 あれは王家御用達のザイール商会じゃないのか? あの商会とは持ちつ持たれつの関係なのに…」
「この街を捨ててウエストポートシティに行くつもりだったのであろう? ならば問題無いのである」
「大アリだぁ!」
とは言え所有者は遠くのどこかへ飛んでいったのであるし、他に適当な馬車が見つからなかったこともあり、結局徴収した箱馬車を使う事になった。
「あああっ、ザイール商会には何と謝罪すれば…」
「ふむ、消した方が良かってであるか?」
「穏便に済ませたかったんだよっ!」
文句の多い奴だな。 結局使うのだから問題無いであろうに。 それに放り投げた連中は戻ってくるまで1年は掛かると思うぞ。 結構な距離を飛んでいった感じであるし。
何だか不満がある様であるが、全員馬車に乗車して王都を出発の準備が完了した。 ふむ、順調であるな。 とは言え我はサイズ的な問題から外での歩きになるのであるが。
「出発するのである!」
「仕切るんじゃねぇっ!」
そんなこんなで門まで向かい、街を出る手続きをする。 とは言っても、我は見ているだけなのであるが。
「持ち出し禁止の物などは含まれていませんね?」
「ああ、問題ないハズだ」
「荷物検査を行いますので暫くお待ち下さい」
ぬぅ、待たされるのであろうか? こんな場合は確か、王族などであればノーチェックであったハズである。 うむ、知らないのであろうか?
ならばここは我が教えるべきであろうな。
「待つのである」
「何か御用ですか?」
「アビスさんは黙っていて下さい」
「知らない様であるから教えるのである。 王族が乗っている馬車は、ノーチェックで通すのが常識である」
「えっ、王族の方が乗っていらっしゃるんですか? でも専用の馬車じゃありませんし、確認できる物を何かお持ちでしょうか?」
「うむ依頼主よ、さっさと出すのである」
「お忍びだって言っているだろうがぁぁぁ~っ!」
ストレスでも溜めているのであろうか? 不健康であるな。
だが結局騒ぎになって、王族を示す短剣とやらを護衛対象のレオが見せて、問題無く通過する事が出来た。 ふむ、最初からそうしていれば良いモノを。
疲れでも溜まっているのであろうか? 何だか全員が項垂れているが、そんな事では旅には支障が出るのではあるまいか?
「疲れている様であるが、元気を出すのである。 そんな事では到着する前に倒れてしまうのである」
「アンタのせいで疲れているんだよっ!」
「ふむ、元気が戻った様であるな」
「うがぁぁぁ~っ!」
情緒不安定であろうか? やぱり健康に不安があるようであるな。
「情緒不安定であるな。 健康には気を付けるのである」
「ありがとよっ!」
何であろうか? ヤケクソっぽく応えられたのである。 まあ、
そんなこんなで王都から離れ、少し見通しが悪い林に入る。 ぬぅ、弱っちい何かが潜んでいるようであるな。 無視すべきであろうか?
「おうおうおう、お前らザイール商会の連中だな」
「違うのである。 王族一行である!」
「だからお忍びだと言っているだろうがぁぁぁ~っ!」
「えっ? 違うのか? でもその馬車はザイール商会のモノだろう?」
「今は我のモノである!」
「拝借しているだけだろうがぁぁぁ~っ!」
「えっと、この場合どうなるんだ?」
「こうなるのである!」 ぺしん!
「うぎゃっ!」
「ふむ、問題解決であるな」
「無茶苦茶だぁぁぁ~っ!」
だが実際は問題解決とはならず、次々と出てきた雑魚に馬車は取り囲まれてしまった。 マイムマイムであろうか?
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