白日の元に晒される闇2-3

「それと、怨恨も入ってんだろうなァ。兄弟間の関係ってのはァ、他者が思っているよりも根深い時があっからよォ」


「証拠は出揃ってる。例えここで俺たち探偵相手にシラを切ったって、いずれはバレる。警察はバカだけど、宮野や橋爪はまだ優秀な方だと思うぜ。詳しく調べれば、事件解決まで必ず辿り着く。いつまで逃げられるだろうな」


  蓮が目で示す先には、苦笑した宮野と心底嫌そうな顔をした橋爪。


  確かに、あの二人はまだ優秀な部類だろう。


  宮野は自分が信用出来る、数少ない人物のひとりだから。


  橋爪も捜査方法に若干の難ありだが、真実を追い求めるその姿勢は尊敬出来そうだ。


  探偵に頼りきりの無能な刑事たちとは程遠い。


「なあ、慎。違うよな。お前が圭太を殺すはずないよな。だって、家族なんだから。私とお前は兄弟なんだぞ。私を落胆させるような真似、お前がするはずないよな。私を失望させるような真似はしないだろ?」


  赤木が弱々しく矢野の腕を掴む。


  震える手から、彼の不安が手に取るように感じられる。


  この瞬間だけは慣れない。


  証拠を突きつけられた犯人の身内や仲の良い人物は、犯人以上に認められない。


  俺は何もすることが出来ないということを、突きつけられる。


「当たり前だろ、兄貴。俺が俺の家族を殺したりなんかするもんか。圭太を殺したのは俺じゃないよ。きっと何かの間違いさ」


  へらっと笑った矢野が、安心させるように肩をすくめる。


「そ、そうだよな。お前じゃないよな」


「信じてくれよ、兄貴」


  赤木は、明るく笑った矢野の肩を叩く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る