白日の元に晒される闇1-4
勢いよくボールペンを引き抜く。
空いた穴から勢いよく吹き出す赤い水。
水槽を用意しておいて正解だった。
水槽に赤い水を撒き散らしながら、ビニール袋は見る見るうちに萎んでいく。
「これが圭太くんにも起こった。神崎の足に刺さったガラスを抜いた時、出血したのを見て分かったんだ。首に刺さったボールペンを、時間が経ってから引き抜いたんだ。この方法なら、アリバイなんてクソ喰らえだよな?」
ビニール袋を水槽に落とし、矢野慎を睨む。
「時間が経ってから引き抜いた?どうやって?」
「往生際が悪ぃな。簡単な話だ。被害者本人に引き抜かせれば良い」
蓮の言葉に、矢野が吹き出す。
その笑いは次第に声を上げたものに変わっていく。
「馬鹿じゃねぇの。どうやったら時間が経った時にボールペン引き抜かせられんだよ。直ぐに引き抜いちまうだろ。下らねぇもん聞かされるために集まったわけじゃねぇんだぞ、探偵さんよお」
「だから気絶させたんだろ、被害者を」
「この本、アンタのだろォ。アンタの指紋がベッタリだァ」
控えていたヒロが声を上げる。
手にしているのは、被害者の部屋から持ってきたという、『人体のしくみ』、『解体新書』の二冊。
人体のしくみの方をヒロから受け取る。
「生前、見覚えのない本だって言ってたから。最初の事情聴取の時に採った指紋を使わせてもらったんだ」
「前に圭太の部屋で一緒に読書をした時に忘れてったんだよ」
「物騒な本だよな。巻末ページに致死失血量やら、気絶方法やら記載されてる。これじゃ、人体のしくみじゃなくて、殺人指南書みたいだ」
パラパラとページをめくりながら問う。
所々に蛍光ペンで下線が引かれてある。
どれも、死に関わるものだった。
目線を彷徨わせた矢野は口元を歪める。
「あー、思い出したよ。それ、前の職場の同僚から借りたんだ。線はそいつが引いたんだよ。返し忘れてそのままだった」
「そいつの名前は?確認するから教えてくれよ」
「さあ、何だったかな。結構前に一ヶ月もしない内に辞めたから、もう覚えてねぇよ」
あくまでシラを切るつもりか。
そんなこと、許してたまるか。
「近隣のドラッグストアで、アンタの目撃情報があった。確認したが、睡眠薬を購入したらしいな。それも、頻繁に何度も。用途は?」
「自分のために決まってんだろ。寝付きが悪いからな。そんなやつ、他にもいっぱいいるだろうが」
「嘘だ!その睡眠薬は、被害者に飲ませるために購入している!」
息も絶え絶えといった風に言葉を紡ぐのは、俊矢だった。
やっと戻ってきたらしい。
肩で息をした彼は、蓮に向かって強く頷いた。
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