現状の打開4-2

「にしても、圭太も可哀想だな。宿題してただけだってのに、首にボールペンが刺さって殺されたとか。すぐに声を上げりゃあ、助けが来たかもしれねえのに。あの部屋、防音だったけどさ」


「他になにか、気になることは?」


「いや別に。兄貴の方は何かねえの?」


  名指しされた赤木は不機嫌を隠そうともせず、元博を睨み付ける。


「私が望むものはただひとつ。即刻この殺人鬼を逮捕しろ。お前たちは慎を疑っているようだが、慎が圭太を殺すはずがない。確かに慎は無職でガラも悪いが、圭太を邪険に扱ったことなどただの一度もない」


「なあ兄貴、俺のこと褒めてんの?ディスってんの?」


「圭太を返せ、犯罪者め。お前たち何でも屋を利用したことこそ、私の最大の過ちだ」


  元博に罵声を浴びせる赤木。


  止めたい。止めなければならない。


  なのに、彼の気持ちが痛いほど分かってしまう。


  事件現場はやはり、息が詰まる。


  負の感情に埋め尽くされる空間で、頭がおかしくなりそうだ。


「ごめんなさい、赤木さん。もしかしたら、事件の引き金は俺たちかもしれない。でも、だからこそ真実を明らかにする必要がある。やってもいない殺人を認めることこそ、圭太くんに失礼だと俺は思ってる」


「元博……」


「頼むぜ、蓮。正しい捜査をな」


  ポンと肩を叩かれる。


  強ばった身体が解かされていく。


「もうひとつ聞かせてほしい。圭太くんは足を枕の方に向けて倒れていた。何故だと思う?」


  宮野に現場の写真をみせてもらってから、ずっと気になっていた。


  蓮たちが考えている、眠っている時に殺されたのだとしたら不自然だ。


  枕を足蹴にするだなんて。


「眠たすぎでボーッとしてたんじゃねえの。俺もたまにやらかすぜ。ましてアイツはガキなんだから、予想もしねえ行動だってすんだろ」


  矢継ぎ早に捲したてる矢野に、やはり違和感を覚える。


  先入観を持つなと宮野に叱られるだろうが、致し方ないと割り切る。


  今この場で言葉にこそ出さないが、矢野慎が犯人であると仮定しての捜査なのだから。


「赤木さんはどう思われますか?」


「知らん。圭太がベッドをどう使おうが、本人の自由だ」


「元博は?」


「俺は視覚情報から物事を考えることが苦手だから、何とも言えないかな」


  今のところ、矢野の証言が有力か。


  時計を見やる。


  タイムリミットはあと二〇分。


  そろそろ推理を固めるべきか。

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