始まりはいつも雨3-3
白羽の矢に立った元博は慌てふためき、蓮の肩を掴んできた。
馬鹿力だから遠慮していただきたい。
元博は早口で捲したてる。
「俺はただの付き添いだろ。勝手に話を進めるんじゃない」
「鹿野元博。蘭木市三丁目のコンビニエンスストアでアルバイト中。九重蓮とは蘭木幼稚園からの幼馴染み。高校生の頃からおよそ一〇年以上、同コンビニでのバイトは続いている。現在のシフトは、日曜日以外のほぼ毎日」
「俺のことも調べたのか?」
「九重蓮が鹿野元博を連れてくるのは予想出来てた。念の為だ」
なら丁度いい。
元博に向き直る。
「良いじゃねぇか。ここなら、コンビニよりは給料が出るだろ」
「そういう問題じゃ……」
「お試し期間ってことにすれば?」
いつの間にか神崎が戻って来たらしい。
手には分厚いファイルが握られていた。
神崎の提案に頷いた俊矢は、元博の手を取る。
「試し運用の期間は、とりあえず一ヶ月にしよう。アルバイトと並行してもらって構わない。一ヶ月後、どうするかは元博自身が決めてくれ」
一八歳のガキが一回り歳上の人間を呼び捨てか。
礼儀のなってない子どもだ。
その言葉を飲み込む。
蓮は真子に向かって軽く頭を下げ、ビルを出た。
夕陽が紅く眩しい。
雨はまだ上がっていない。
顔を伏せ、足早に去る。
二度と会わないと決めたあの人は、昔と変わらず輝いていた。
今の俺は、あの人の目にはどう映っていたんだろうか。
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