あのまばたきの意味

藍条森也

明かせない秘密

 「ダメです、局長! 天才文明の秘密を公表するわけには行きません」

 「なんだと⁉ どういうことだ⁉」

 天才文明。

 この世界にはかつて、そう呼ばれる先史文明が栄えていた。

 その文明は無数の天才たちを輩出はいしゅつし、未曾有みぞうの発展を遂げた。そして、あるとき、さらなる高みを目指して文明ごと異世界転移したとされている。

 ただひとつ、神殿と、そこにおさめられた神像だけを残して。

 天才文明は後世の文明に向けて、自分たちの秘密をその神殿に記していた。

 神像のまばたきという形で。

 一定のリズムでまばたきを繰り返す神像。そのまばたきにこそ、天才文明の秘密、無数の天才を輩出しつづけた秘密が込められていたのだ。

 天才文明は自分たちの秘密を確実に後世に残すため、すぐに意味のかわってしまう言葉や文字ではなく『何千年にもわたって残りつづける宗教施設』のなかに刻み込んだのだ。

 そこには『この程度の暗号が解けないようでは我々の秘密を受け継ぐ資格などない』との思いもあったのだろう。

 それを知った人類は、天才文明の秘密を解くために奔走ほんそうした。

 世界中の英知が集められ、膨大な資金が投入され、ついに、神像のまばたきに秘められた暗号が解読された。しかし――。

 天才文明のメッセージを見た局長の顔色は見るみる青くなった。

 「……な、なんと言うことだ。廃棄だ、すべての研究結果を廃棄しろ! あの神殿は永遠に封鎖し、誰も入り込めないようにするのだ! なんと言うことだ、まったく、なんと言うことだ。天才文明の秘密がこんなことだったとは。こんなことは絶対に明かすわけにはいかんのだ」

 そして、天才文明の秘密は永遠に封印された。

 神像のまばたきに込められていた天才文明のメッセージ。それは――。


 『毎日コツコツ』

                 完

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