第262話 ノイエラント軍 進発
王国歴165年7月25日 昼 レオンシュタインの丸太小屋にて――
「レオン様。ヨシアス殿からの連絡です」
フリッツから連絡を受け、レオンシュタインの小屋には重臣達が集められる。
「レーエンスベルク辺境伯家長男アルフレドは独立軍を立ち上げました。そのため、お金の援助とイグナーツの救出を願い出ています」
レネは、やや興奮しながら、全員に伝達する。
ヨシアスの成功で、参謀長グラビッツの作戦がスムーズに進みそうだ。
レオンシュタインはヨシアスに心から感謝する。
「お金はいかがいたしましょう?」
「大金貨200枚(約20億円)をすぐに援助です。マッチョ隊には悪いですが、早ければ早いほど、効果を発揮するでしょう。2回に分けて運搬してくれますか」
次は軍事について、主任参謀長グラビッツが意見を述べる。
「ナレ砦などに最低限の兵を残し、全軍をノイエラント北部のヴァルデック城に移動させる。クリッペン地区では、他国と連携する際に時間がかかり過ぎるからな」
「さらに、シュトラント伯と交渉し、中立を保ってもらおう。その後、軍を境界の町バンデルビットまで移動させたい。辺境伯領へは、そこから進撃可能だからな」
地図を示しながら、グラビッツは流れるように説明する。
対ユラニア王国と戦うための作戦は、参謀達と考え続け、資料を見なくても話せるくらいになっていた。
グラビッツは、まず全員にレーエンスベルク辺境伯領を詳しく説明し始めた。
「辺境伯領は北側はユラニア王国、北西部はロッツメルブラートという亜人国家、南西部をヘレンシュタイク公国、南はシキシマ地区、南東の一部にシュトラント伯領、東側はコムニッツ公爵領と、多くの領土に囲まれてる」
地図の真ん中にあるヒョウタンのような形の領土を指し、グラビッツはさらに続ける。
「主な城は、領土の中央付近にホーエンシュバンガウ城、その北60kmほどにファルケン城、さらに北にある王国との境界にあるホーエス城、南側の中央にシュパレン城がある。辺境伯の居城はホーエンシュバンガウ城だ」
それぞれの場所に城を示す正方形の箱を置いていく。
「作戦の第1段階は、公国のアルタンツェ殿に辺境伯領のクロップ砦とその北側のアルテナ砦を落としてもらう。それを知れば、シュパレン城からゲオルフが、ホーエンシュバンガウ城からは辺境伯が出撃する」
地図の上に公国を示す緑色の駒が置かれる。
また、それに向かって進発する辺境伯軍も赤色の駒が置かれる。
「それと連動し、辺境伯長男アルフレド殿に、辺境伯領の北部にある2つの城を落としてもらう。順序は王国との境界にあるホーエス城、次はその南部のファルケン城だ」
地図の上の駒が次々と動いていく。
「辺境伯軍は2正面作戦を強いられる。恐らく北側には辺境伯本人が、南部はゲオルフの軍が対応に当たるはずだ。辺境伯の兵士は精強だから、公国やアルフレド独立軍と協力し、軍を壊滅させる」
「レーエンスベルク辺境伯軍は5400人、我が軍は4400人、公国軍は2500人、アルフレド独立軍は今の所不明だ。ただ、1000人を超えることはないだろ」
王国軍が援軍として来なければ、十分に勝機はある。
グラビッツは最後の仕上げとして、弟子に大きな試練を与える。
「そして、フォルカーにはホーエンシュバンガウ城を落としてもらう。いいな」
「……うす」
「イグナーツは、ホーエンシュバンガウ城に幽閉されているはず。城を落とせば、自動的に救出できる」
ユラニア大陸屈指の堅城、ホーエンシュバンガウ城を落とすには4000人の軍では足りないはずだ。
レオンシュタインが指摘すると、
「秘策があります」
グラビッツは不適に笑うのだった。
「ホーエンシュバンガウ城を落とせば、辺境伯領はアルフレド殿のものとなります。あとは、王国の動きに注力しましょう」
すぐに、動員令が出され、シキシマ地区に伝令が走る。
ルカスの農業チームは軍の食糧確保計画に余念がない。
シキシマ地区やクリッペン地区、ヴァルデック領からの食料を前線まで輸送することは、戦うこと以上に大切なのだ。
「早く平和になって、うまいもん、食いたいよな」
ルカスは心から思うのだった。
また、アルフレド独立軍への資金提供もすぐに実施される。
公国にも、出撃依頼の使者がたつ。
どちらも、マッチョ高速船が活躍するのだった。
§
それから3日後の王国歴165年7月29日に、出発の準備が完了した。
レオンシュタインが出陣の号令をかける。
「ノイエラント軍、進発せよ!!」
「おう!!!」
その姿をレネ、アイシャたち残留組が見送るのだった。
-----
レーエンスベルク辺境伯領付近の地図はこちら
https://kakuyomu.jp/users/shinnwjp0888/news/16818023213053190873
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます