第47話 主の夢を助けたい
王国歴162年9月18日 20時頃 レオンシュタインたちの部屋にて―――
レオンシュタインは酒場での話をティアナに詳細に伝える。
ティアナはレオンシュタインらしいとは思ったが、すぐに賛成できる話でもない。
再度、自分たちの旅の費用を確保しておきたいことをレオンシュタインに話した。
でも、レオンシュタインは首を縦に振らない。
「それは分かる。でも、今、ディーヴァさんに希望をもたせないと、彼はお酒に飲み込まれてしまう。銀貨100枚(約100万円)を寄付すれば希望が見えてくる。そうすれば、喪男同盟のみんなも寄付を増やしてくれるかもしれないしさ」
「100枚って。レオン……」
「確かに大変かもしれない。でも、一人の天才を救うためにお金を寄付することは、多くの人に幸福をもたらすと思う。それができるのは、今のところ僕たちだけだ」
「じゃあ、私たちは?」
そう言うとレオンシュタインはニコニコしながら、きっと神様が助けてくださるからと楽観的に話してきた。
その楽観にティアナは呆れる思いがしたが、レオンシュタインらしいとも思う。
最後の砦とばかりにイルマに話を振ると、意外な答えが返ってきた。
「私はいいと思う。ほとんど見ず知らずの私に、主は銀貨200枚を使ってくれた。それで、私はこんなに幸せになれた。だから、私は反対しない。お金がないなら、私が働く。ディーヴァさんにも幸せになってもらいたい」
イルマの答えにティアナも頷かざるを得ない。
二人を見て、レオンシュタインは宣言する。
「銀貨100枚を喪男同盟に寄付します」
その瞬間、レオンシュタインのお腹がぐうと音を立てる。
酒場であまり食べなかったからね、とイルマに言い訳をする。
ティアナはさっき買ってきた焼き肉の包みを机に出した。
美味しそうな匂いはするが、肉はすっかり冷めていた。
「下で暖めてくるよ」
イルマが包みを持って下の食堂に急ぐ。
バタンとドアが閉まると、ティアナはレオンシュタインが座っている椅子の後ろに行き、レオンシュタインの髪を優しく撫で始めた。
「相変わらず、困っている人を放っておけないんですね。この人は」
いたずらっぽい口調でティアナはレオンシュタインを揶揄する。
とても優しい時間が流れる。
「ティア。ごめんね」
「いいんです。私だって嬉しいんです」
本当にこの人はしょうがないなと思いつつ、その優しさは呆れるを通り越して、感動すら覚えるほどだった。
そして、頭をそっと抱き抱えようとした瞬間、
「少し目を離したら。何をしてるんすか!」
イルマがドアを乱暴に開けて入ってくる。
ティアナは思わずレオンシュタインから、ぱっと手を離す。
「別に、レオンシュタインを褒めてただけだから」
「口で褒めろよ! 全く、油断も隙もない」
イルマはぶつぶつ言いながら、焼き肉を差し出す。
湯気が立ち、肉からはジジッと肉が焦げる音がする。
部屋全体に
すぐさま3人は、串を手に取り、思い切りかぶりつく。
「美味しい!」
3人同時に同じ台詞を話す。
しばらく焼き肉を堪能しながら、ティアナは今日魔法院であったことを話す。
「今日の稼ぎは、何と銀貨4枚ですよ」
レオンシュタインとイルマは、その額の大きさに驚き、喜ぶ。
この分だと旅のお金が増えそうだ。
すると、焼き肉をテーブルの上に置き、イルマが姿勢を正す。
そして、盗賊退治をしたいと提案してきた。
レオンシュタインはイルマの身に危険が及ぶことが嫌で、許可できないと即答する。
自分の身を案じてくれるレオンシュタインに感謝をしつつ、イルマは自分の考えを二人に話す。
「主。今のままだと、剣の腕が鈍ってしまう」
でも、イルマが盗賊に捕まったらどうなるのかを考えるだけでもレオンシュタインは怖い。
「寄付はやめよう。イルマ、戦わなくていい」
イルマは語気を強めて、それを否定する。
「
イルマの気持ちがその場を支配する。
レオンシュタインはその優しさが、本当に嬉しかった。
「……分かった。でも、絶対に気をつけて」
イルマは笑顔で頷くと、いつものイルマに戻る。
「私、何だか不安になってきました。主、今日、一緒に寝てくれますか?」
「調子に乗るな!」
そして、いつも通りの3人に戻るのだった。
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