まずは、おあしす先生に書籍化のお祝いを申し上げます!
本を拝読しましたので、こちらへレビューを贈らせていただきますね(^^)
その昔、大学生になったばかりのときに、『後宮小説』という作品に出会ったことがありました。
あれから35年余り、とあるきっかけで知った書籍の発売告知が、私を『後宮』という言葉と再会させてくれました。
その作品は、『後宮の備品係』。
このタイトルを見た私は、じわりと『後宮小説』の良質な読了感を思い起こし、表紙イラストの美しさも手伝ったためか、気が付けばいつのまにか予約を完了していました。
本を予約した後、私が勝手に想像していたこの作品は……、かつて読んだあの作品のような、古代中国を舞台にした歴史ロマン劇。
すぐにも読みたい衝動に駆られましたが、敢えて、なんの予備知識も持ちまいとWEB版は訪れず、本が届くまで一切の情報を遮断しました。
そして、本を手に取り、目を落とし始めた過日。
この物語も、『後宮小説』と同じく、田舎の村に住むヒロインを宦官が連れに来るシーンから始まりました。
期待はいよいよ高まります。
しかし……、私が大きく裏切られたのは、そのすぐ後でした。
もちろん、古代中国風の歴史ロマン的要素は、当然に想像のとおりです。
ところが、読み進めていくと、なんと、その物語は探偵推理小説よろしく、類稀なる記憶力を武器にヒロインが謎に迫り、そしてこれを小気味よく解決して世直しに資してゆくという、なんとも魅力的なサスペンス風エンターテイメントものではありませんか!
実に……、実に良質の裏切り……。
陰気な文字列はなく、シリアスな中にもライトなセリフ回しが乱舞して、スムーズかつ軽快に楽しめるその物語は、まさにライトノベルらしさの真骨頂といった感があります。
さらに、そのまとまりの良さにも敬服しました。
私には書けない、無駄のないタイトな仕上がり。
そして、そのテンポの良さに加え、推理、陰謀、策略、アクションと……、豊かなエンタメ要素が随所に散りばめられ、読むものを飽きさせない、実に巧みな構成にも息を飲まされました。
終わりも秀逸です。
もう少しこの世界を堪能していたいと思わせる含蓄あるエンディングは、読む者に爽快かつ柔和な読了感を与えます。
さて、みなさま、普段ほとんど他の先生の作品に関心を示さない私が、レビューまで書きたくなった本作、『後宮の備品係』。
このレビューを読まれる方は眼前にWEB版がある状態ではありますが……、本となるとまたひと味違いますよ?
イラストも素敵ですので、ぜひぜひ、書店にてお手に取られることをおススメいたします(^▽^)/
読み終わってみれば、物語の最初から最後まで美しくバランスの取れた小説。
連載ものとして書かれたのではなく、ひとつの長編としてきちんと書き終えたものを分割して投稿されたような無駄のない印象。
物語の終結も、読者がその先に思いを巡らせて想像を楽しむ余地を残した読後感。
この読後感、紙本の良作ではしばしば味わえますが、連載で味わえるのはそうそう覚えがありません。
また、余情なく語り尽くしてしまうことが多いWeb小説に慣れた方は物足りなく思われることもあるかも知れませんが、私には、この終結は絶妙で、この作品の価値を下げず印象を後に残すものであるように思えます。
絶妙です。