第60話 暁蕾、仮説を説く
美麗は提灯を左右に移動させて、ぐるっと全体を照らす。見える範囲の棚は全て空だ。
「どうして何もないの? この倉庫は使われてないってこと?」
暁蕾は思わず
「ちょっと待って! 奥の方に何かあるわ」
倉庫の一番奥の方で何かがキラリと光るのを見て
表に置かれた品に隠れて後ろにも金細工や高級な陶器が並んでいた。
(これって、まさか!)
暁蕾は混乱していた。そこに並んでいる品には全て見覚えがあった。慈善販売会で自分たちが売った品々だったからだ。どういうことだろう。一度売った商品をもう一度買い戻したのだろうか? 暁蕾は新婚の夫婦に売った青花磁器の皿を探す。
――ない
それ以外にも戻ってきていない商品もたくさんあるようだ。暁蕾は万能記憶を使って商品の値段を検索する。すぐに結果はでた。ここに戻ってきている商品は全て高額の商品だ。
「どうしたの? 暁蕾、考え込んじゃって」
「ここにある品って全部、私たちが慈善販売会で売った商品なんだよ」
「えっ、そうなの? うん確かに見たことあるかも。でもなんで?」
「あ、わかったわ!
その可能性はゼロではないが、わざわざそんなことをするだろうか? もしそうなら
「あーあー、もっと珍しいものがいっぱいあると思ったのに。つまんない。見つからないうちに帰ろうよ」
「そうだね」
あっけらかんとした
※※※※※※
数日ののち、暁蕾、
まず最初に秀英が口を開いた。
「毛皮の密輸犯を使ったおとり作戦が成功した。指示役の女から捕まえた男あてに連絡があり、安慶にある空き家で接触することになった。俺はそこでその女を捕らえるつもりだ」
次に甘淑が報告を行う。
「俺は宦官から重要な情報を得たぜ。
最後に暁蕾の話す番となった。
「先日、
「
「わかりません」
「そりゃないだろ。そんなことする意味がない」
首を横に振った暁蕾を見て甘淑が言った。
暁蕾は、すうーっと息を吸って秀英、甘淑の顔を順番に見た。頭の中で今から話すことについて最終確認が行われた合図だった。
「秀英様、甘淑様、今から話すのはこれまでの情報をもとに私が立てた仮説です。どうぞお聞きください」
目の前のふたりが承諾の意味でうなずくのを見て暁蕾は続ける。
「すでに判明しているように、翠蘭妃と後宮の貴妃たちは日用品の発注を通じて宦官に
慈善販売会で民に紛れ込ませた宦官に商品を買い取らせることにしたのです。まず安く買った商品を闇の市場に売りに出させます。闇の市場では劉家に通づる闇商人がそれらの商品を高く買い取ることで差額を賄賂としたのです。買い取った商品は劉家から宦官へ渡され再び倉庫へ戻されました。私が見た商品は宦官により戻された品でしょう。
もちろん毎回、販売会を開くわけにはいきません。
暁蕾の説明を聞いていた秀英は不快そうに眉をひそめた。一方の甘淑は無表情のままだ。暁蕾は続ける。
「もうお分かりですね。賄賂の金額が高騰した理由は、宦官に高価な槃麻を売る必要があったからです」
「なるほど、よく考えられた仕組みだな。それでどうやって証拠をつかむ?」
甘淑が試すような目で暁蕾を見てくる。
「もちろん現場を押さえるんですよ」
「誰が?」
「私と甘淑様に決まってるじゃないですか」
甘淑は口をあんぐりと開けて固まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます