第56話 暁蕾、再び紅玉宮へ行く
秀英、暁蕾、甘淑の3人は急いで
「迦楼羅汗に偽の情報を流したのは、やはり死んだ骸骨男でしょうか?」
「おそらくそうだろう。やつは誰かの命令で汚れ仕事を請け負う工作員だったのだ。報酬として麻薬を受け取っていたが、我々の調査が及ぶことを知った雇い主に見限られて、自ら命を絶ったと考えるとつじつまが合う」
暁蕾の問いに秀英は考えながら答えた。
「これからどうするんだ?」
甘淑が聞いた。
「俺は密輸の取り締まりを行って、毛皮の価格を安定させる。暁蕾と甘淑は、骸骨男を操っていた黒幕に関する情報を集めてくれ」
3人はそれぞれ次の仕事に取り掛かることになった。事態は思ったよりも複雑で絡みあっている。それでもひとつひとつ解きほぐしていくしかない。自分の持てる力を全て使おうと暁蕾は思った。
※※※※※※
秀英が纏黄国との交渉を成功させたことはすぐに大きな話題になった。同時に翠蘭妃が私財を投げ売って援助物資を買う資金を作ったことで、国を思う素晴らしい貴妃だと評判になった。紅玉宮の悪い噂もすっかり消えうせ、皇后に次ぐ后妃には翠蘭妃がふさわしいと言われるまでになった。
紅玉宮には連日のように貴族や商人が訪れ、次々と贈り物が届けられる。今のうちに翠蘭妃に取り入っておこうと誰も彼も必死なのだ。しばらくして紅玉宮から暁蕾に仕事の依頼があった。以前やったことのある倉庫整理の仕事をまたお願いしたいとのことだ。
もとはと言えば、倉庫に眠っている不用品を民に安く売って、その資金で纏黄国へ援助物資を送るというアイデアは暁蕾が考案したものだ。もちろんそんなことは
暁蕾が紅玉宮を訪れると、宮のあちらこちらに贈り物の山が出来ていた。送られる量が多すぎて整理できていないのだ。
侍女である
「ああっ、いいところに来たわ。これからなん組もお客様がいらっしゃるから、応対で私たちは手一杯なの。早くその贈り物を片付けてちょうだい!」
「あの……
「いつもの倉庫へ運んで! 倉庫もまた散らかってるからそれも片づけるのよ」
そう言い残すと慌ただしく
女官から鍵を受け取り倉庫の扉を開ける。廊下に積み上げてある贈り物が入った様々な大きさの箱を倉庫の中へ少しづつ運び入れた。次に箱を開けて中に入っている品物を取り出す。豪華な装飾品や調度品が次々と出てきた。
倉庫にある品を安い値段で売った翠蘭妃だったが、結局それを遥かに上回る量の品々を手に入れることになった。
(皮肉なものね)
何が良くて何か悪いのか。すべては後になってみないとわからない。幸運と不運は表裏一体なのかもしれない。
さて次は品物の目録を作ろう。暁蕾は万能記憶能力を使って品物の名前、送り主の名前を次々と書き出していく。もともと倉庫に置いてある品も忘れず書き込む。
(あれっ? 何か変ね)
暁蕾は違和感を感じた。あるべきものがない。棚に置かれた品物と品物との間にぽっかりと隙間が出来ている。ここにあったのは――
――金メッキの香枦と
骸骨男が慈善販売会で買っていき、
翠蘭妃は品物が戻って来たことにとても驚き、そして喜んでいた。
「こやつらは、わらわのところへ戻って来たかったのやもしれん。あの倉庫が居心地よかったのじゃろう。元の場所へもどしてやれ」
翠蘭妃はそう言ったのだ。言いつけ通りに暁蕾は、香炉と
もしかして箱から取り出して使っているのだろうか? 紅玉宮を全て見て回ったわけではないが少なくとも暁蕾が見ることが出来る範囲には見当たらなかった。
(そう言えば……)
暁蕾の頭に浮かんだのは、一緒に倉庫整理をした女官、
暁蕾が高速で作業を進めたことで贈り物はかなり片付いた。様子を見に来た
「青鈴様、倉庫にもともとあった品が見当たらないのです。もしかしたらもうひとつの倉庫に間違って移されたのかもしれません。確かめたいのですがダメでしょうか?」
「それは無理ね。あの倉庫は勝手に入ってはダメだと言われているの。私でも何年か前に一度入ったことがあるだけなんだから」
「何か重要なものを入れているんでしょうか?」
「さあ、わからないわ。あなたが頭がいいのは認めるけどあまり余計なことに顔を突っ込まない方が身のためよ」
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