第47話 暁蕾、嘘をつかれる
「
「物事にはふたつの側面がある。確かに生活に困っている宦官を援助するという目的もあるだろう。だがもうひとつの目的は宦官を支配し言いなりにさせることだ。
(後宮全体にですって!)
暁蕾は言葉を失った。それが本当なら自分たちが処理している大量の発注書は、そのほとんどが宦官へ賄賂を渡すための指示書だということになる。
(はっ! まさか董艶様も?)
暁蕾は、反射的に董艶妃へ視線を向けそうになるのをなんとか思いとどまった。
「くだらん仕組みじゃ。こざかしいのおー」
まるで暁蕾の心を見透かしたように董艶妃が言った。
「董艶さまーっ。もうお
「申してみよ」
董艶妃は短く答えた。
「董艶様からの発注書、確かに受け取りました。今まで董艶様は我々宦官と距離を置いてこられた。さきほどご説明した仕組みも決して利用されることがなかった。ですが頂いた発注書の内容はまことに挑発的でございました。さすがは董艶様、だれも真似できぬ大胆さっ!」
「
董艶妃の眉根が寄るのを見た暁蕾が口をはさんだ。
「……失礼。13年前の事件のとき我々宦官は一枚岩でした。今の皇太后、
暁蕾の頭に
「その直後、宦官の中に
「お前の話とは、宦官どもの醜い権力争いが起こっているので、わらわになんとかせいと言うことか?」
「めっそうもございません。董艶様にそのような厄介ごとをお願いするわけがございませぬ。董艶様への使者として私が選ばれたのは皇太后派、皇后派そのどちらにも属していないからなのです。つまりは自由に動ける身ということでございます」
「つまりはどちらにも取り入って利用しているのだな」
「ははは、董艶様もお口が悪い。私は平和主義者なのです。このままでは13年前と同じ悲劇が繰り返されるでしょう。しかしながらそれは私には預かり知らぬこと。問題はもうひとり私を頼っている男がおるということです」
「頼っているじゃと、そやつにも取り入ろうとしとるのか? 誰じゃ?」
「御史大夫の
(
暁蕾は、目を見開いて
「董艶様に献上
(えっ! 今なんて言ったの?)
「あの空き家事件の日、私は
※注……
暁蕾は、空き家に踏み込む深緑の
「そして死んだ宦官は私たちに向かって言ったのです……ああ」
「何と言ったのだ? 申せ!」
董艶妃の鋭い声音が響いた。
「溏帝国は終わりだ。お前たちはみな死ぬのだ――冥水様、万歳! と」
「なぜです! なぜそのことを秘密にしているのです!?」
暁蕾は甘粛へ詰め寄って叫んだ。
「さあな、俺は事の次第を
「なぜ、
「俺が知るか、小娘。気になるならお前が直接聞けばいいだろう。お前はあいつのお気に入りなんだろ」
「それだけじゃあない、御史大夫は俺に香炉と
(そんな……なぜ?)
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