第41話 暁蕾、助手を得る
「さっきから黙って聞いていれば、指の紋様だー? そんなものが何になる? そもそもそんな紋様の話なぞ聞いたことがねーなー」
「ご自分の指の紋様をご覧になったことはありませんか? ここまでハッキリとではなくても汚れた指で何かを触った時に指の跡が付いたことがあるはずです」
「俺はなー綺麗好きなんだよ。汚れた指で何かに触れることなんぞないね」
おそらく
「
「董艶様も
(おい、おい、この宦官はさっきまで董艶様の靴を犬のように咥えていたんだけど)
目先の展開で簡単に心が動かされてしまう女官たちに
「鎮まれ!」
「暁蕾、続けよ」
「皆さん、ご自分の指をよくご覧ください。
女官たちの一部は自分の指先をまじまじと眺める。そんなこと知っているとばかりに
「この紋様は人によって形が違うのです。例え双子であろうと必ず違う紋様なのです。皆さんお一人お一人必ず違う模様、皆さんの個性なのです」
何人かの女官が、ほうーとうなずくのが見えた。少しでも反応があれば上々と言える。
「ごく最近のことですが、遥か西方の異国よりある技法が伝えられました。その技法とは、人が触れてついた指の紋様を誰のものか判別できるようにするというものです。先ほど
「実は目には見えなくても触れたものに指の紋様が付いているのです。なぜなら皆さんの指先には普段から少しの油がついているからです。皆さんが無意識に髪の毛や顔に触れたときに油分がついているのです。この油が触れたものに指の紋様となって跡をつけているのです」
「まてまて、小娘ーっ! 油だとー。指に油などついていたら滑ってしまうだろうが。適当なことを言うな」
甘粛が芝居がかった声音で反論する。
「今から、皆さんにもご覧いただきます!」
「
「言われた通りにしてやれ」
広間を明るく照らしていた、たくさんの蝋燭のうち半分程度が吹き消された。同時に
広間が一気に暗くなり、女官の息をのむ声が聞こえた。暗くなったことによる不安の声と共に目の前の光景に驚いた声も混ざっていた。
香炉と
「何なの? 怖い」
「どんな幻術を使ったの?」
広間の女官たちの間に不安と驚きがじんわりと広がっていくのが
「誰か、足元を照らして下さりますか?」
反応はない。暗闇をひとりで進むしかない、そう思った時、背後から蝋燭が差し出され足元が照らされた。驚いて背後を振り向くと細く鋭い目が暁蕾に向けられていた。背の高い飾り気のない顔の女官、いつも
「
「え、あ、ありがとう」
(董艶妃から指示されたのかな? いや今はそんなことどうでもいい、助かったわ)
「さあ、ご自分の目でご覧になってください。この水晶を使えばより大きくして見ることができます。まずやってみましょう!
「うわーっ、すごーい! 大きくはっきり見えるわ!」
女官は興奮して歓声を上げた。
「さあ、この布を頭から被って光を遮りましょう。もっともっとよく見えますよ! 品物には触れないでくださいね。紋様が消えてしまうので」
香炉、
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