第39話 暁蕾、証明を始める
「もう降参かぁー。小娘ぇー。まだ何も明らかになってはいねぇーぞ」
「
董艶妃は、
「あっ、そうだ!」
不意に
「ここにあるふたつの品についてですが……」
「私は慈善販売会で売る値段をつけるのにとても悩んだのです。ですので闇の市場でどれほどの値段で売られていたのかとても気になります。
「お前はいくらの値段をつけたのだ?」
「香炉が30貫、
「さあな、小娘ぇーっ。俺は死んだ宦官がそれらの品を高値で売ろうとしていたことは知っておるが、いくらで売られておったのかは知らん。どうせ俺に答えさせて、どうして知っているのですかーっなどと揚げ足を取ろうと思ったんだろう。そんな手には乗らねーよ」
「そうですか。
暁蕾はなんでもないことのように軽い調子で言った。
「全然反省してねーじゃねーかぁー! この偏見まみれのドブネズミがぁぁー!」
憎悪のこもった瞳を
「30貫? 25貫? どうでもいいねーっ! お前は
「――見たことがない?」
「
「よかろう。準備してやれ」
団扇越しに
すぐさま紙と筆が用意され、
「董艶様〜っ、この娘は一旦私に降参するようなことを言いながらこのような悪あがきをするとは納得いきませぬ」
「なんじゃ? お前の舌にかかれば小娘の浅知恵なぞ怖くはなかろうと思うたが違うのか?」
「もちろん怖くなぞございませんよ〜。大丈夫です。お任せくだされ〜。ただ、くれぐれもご褒美のことお忘れにならないでくださいね〜」
「くどいぞ! そこの椅子に座って大人しくしておれ」
「何をするつもりなのかしら。董艶様を待たせるなんて図々しいったらありゃしない」
「
広間の扉が開き木の箱を持った女官が入って来た。
「
「
董艶妃の言葉に
「皆様、お待たせ致しました。始めます」
まず、暁蕾は絹の手袋を両手にはめる。それから目の前にあるふたつの品、香炉と
次に円筒形の入れ物の蓋を取った。刷毛の先を入れ物のなかに突っ込んでから引き出すと刷毛の先に白い粉が付着しているのが見えた。
暁蕾は刷毛でふたつの品の表面を優しくなで始めた。品物の表面に白い紋様が浮かび上がる。
目の前の少し離れた場所から
「これらの品を
「よいぞ、お前が持って参れ」
優雅な所作で
「それで浮き上がっておるこの紋様はなんじゃ?」
「それは人の指先にある紋様でございます」
「指の紋様じゃと?」
董艶妃はさらに顔を近づけて目を細めた。
「確かにそれっぽく見えんこともないが、小さくてよく見えんのぉー」
「ではこちらの水晶をお使いください」
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