第35話 暁蕾、己を貫く
「
「何をおっしゃいます。私が願い出たのです。是非とも是非とも、
「
いったいこの男は何なのだ?
「控えよ!
「申し訳ありませんー! この
「どうかお許しをぉー」
冷静に見れば何の茶番劇だと呆れ返る場面なのかもしれない。だが
(まるでお芝居を観てるようね)
この部屋にいる女たちは目の前で繰り広げれている出来事に興奮しているのだ。もしかして、こんなことが定期的に行われているのではないか?娯楽の少ない女官たちにとって、これほど刺激的な見せ物はないだろう。
「気持ちの悪い下郎め。わらわの名をその薄汚い口で何度も発しよって、
董艶妃の口元が布で覆い隠されているので、目元の表情しかわからない。それでも深く寄せられた眉根が強い不快感を表していた。口調には怒りが加わりつつある。
ころんと軽い音とともに、何かが
「靴が脱げてしもうた。口で拾え」
甘粛は四つん這いのままはって進み、頭を下ろすと靴を口で咥えた。
(もうこれ以上見てられない!)
もし、自分が
だが、こんなことが許されるわけない。誰でも平等に学問を学べる世の中を作るという自分の夢。民が安心して暮らせる世の中を作るという夢。今目の前で起こっている理不尽な出来事を放置して夢がかなうだろうか?
――答えは決まっている。行動を起こせ!
暁蕾は
「何をしている! 止まれ!」
途端にざわざわとし始める女官たち。
「あやつを止めろ!」
女官のひとりが
「待て!」
董艶妃の大きな声が広間に響いた。ざわめきが一瞬にして静まり、静寂が戻る。
「面白い、そのまま続けさせよ。手を出してはならぬ」
(いったいどういうこと?
肩から女官の手が離れ、
――美しい
それは今まで見たことのない、どす黒く、禍々しい、それでいて決して目を逸らすことのできない美しさだった。
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