第30話 暁蕾、現場を調べる
ひとりだけを残して男たちは骸骨男がいる家へ入っていった。
しばらくして
「
自分を呼ぶということはもう危険がないということだろうか? 骸骨男はどうなったのだろう?そんな事を考えながら部下の男について家に向かう。
暁蕾が家の入り口まで来た時、
「お前、死体を見た経験はあるか?」
「親族の葬儀でありますが……そういう事ではないのですね?」
「ああ、あらかじめ覚悟してもらいたい。お前には顔の確認をしてもらう必要があるのだ」
「わかりました。大丈夫です」
机の隣の床に藁で編んだムシロがかけられた何かがあるのがわかった。人の形に盛り上がっているのを見て暁蕾は息を呑んだ。ムシロのかたわらで
「こっちだ」
「覚悟はいいか?」
「ひどい……」
「慈善販売会でお前が見かけた男で間違いないか?」
「はい、間違いありません」
「もういいぞ」
「大丈夫か? 少し外の空気を吸った方がいい」
「籠の中身は?」
中身はからだった。
「嫌な思いをさせてすまなかった。少し休め」
「大丈夫です。いったいあの家で何があったのですか?」
「わからない。我々が踏み込んだ時すでに男は倒れており、他に誰もいなかったのだ。検死した部下の見立てでは、薬物中毒で死んだのではないかということだ」
「この家は男の家なのですか?」
「違う、ここは空家だ。ここで麻薬の取引があるという情報があって我々は見張っていたのだ」
「机の上にあった籠の中身がなくなっています。部下の方が回収したのですか?」
「ちょっと待て」
「机の上にある籠の中に何か入っていなかったか?」
「いえ、何も入っていませんでした。からです。薬物も見つかっておりません」
報告を終えて部下が立ち去ると、
「やられたな。裏をかかれたのかもしれん。死んだ男以外に誰かこの家に入るのを見なかったか?」
「いいえ、見ていません」
籠に入っていた商品が家の中にないのであれば、誰か第三者が持ち去った可能性が高い。また薬物も見つからないとすると骸骨男が摂取した薬物はその誰かが渡して飲ませたのだろうか?様々な疑問が
「
「落ち着いたら、また御史台へ来い」
「はい、そうします」
路地を大通りに向かって歩き出そうとした
「よいか、これ以上危ないことに首を突っ込むんじゃないぞ。普通に女官の仕事をこなすんだ」
(いろいろ巻き込まれたのは、
そう言いたい気持ちを押し殺して「はい」とだけ返事をしておく。
慈善販売会の会場へ戻ると、
「ちょっとおー!
「
それ以上問題が起こることなく、慈善販売会は無事終了した。
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