第22話 暁蕾、調子が狂う
「えっ! ちょっと」
あわてる暁蕾が止めようするが 、
「わっ、これ可愛い!」
「勝手に触ったらダメだって!」
「はーい」
叱られた子供のようにペロッと舌を出してかんざしを棚に戻す。
「自分の仕事に戻らなくていいの?」
「あーあ、せっかく楽しくなって来たのに。仕方ないか。また遊びにくるね」
「遊びじゃないんだったら!」
「ねえ、
「うん、そうだよ。食料品に織物、装飾品、
(武器のことを聞くべきかな? どうしよう)
「さすがに火薬は無理だよね?」
「えっ、カヤク? 何それ」
「ううん何でもない。忘れて」
「ははーん、異国のお菓子でしょ? 遥か西方の国に信じられないくらい甘いお菓子があるって聞いたことあるもの」
「ば、バレたか」
「
そう言い残すと
(それにしても自由な子だったな)
しばらく呆然と立ち尽くしていた暁蕾だったが、倉庫に入ると木の箱に腰かける。とてもお腹が空いていたので、
お腹もふくれて改めて倉庫のなかを見回す。まずは床に散乱している品物から片付けようと暁蕾は思った。無造作に床に置かれている木箱のフタを開けひとつひとつ中身を確認していく。使わなくなった食器、花瓶、色褪せた
本来なら、必要なものそうでないものと分類して、必要のないものはドンドン捨てていきたいところだが雇われ下級女官の
(ふう、だいぶ片付いたわね)
薄暗い場所で長時間作業していたので目がしょぼしょぼする。腰も痛くなった。倉庫は
やがて夕刻を知らせる鐘楼の鐘がゴーンと鳴った。パタパタと足音が聞こえる。
「時間よ。鍵を閉めるから倉庫から出なさい」
そう声をかけてきたのは侍女の
「まあまあ片付いたじゃない。明日も仕事に励みなさい」
「あの、この後はどうしたらいいのですか?」
「もう、元の職場へ戻っていいわよ。明日定刻になったらここに直接来なさい、鍵を開けるから」
「えっ、
「バカね。あんたの仕事はここの整理だけ。わが宮の一員ではないのだからとっとと帰りなさい」
そういうことか、と
「承知しました」
言いたいことはいっぱいあったが暁蕾は何も言わず、
「こっちの仕事のことは心配しないでいい。しばらく会えないと思ってたから嬉しい」
「私もだよ、
出会った当初は無表情だった
翌日、
「
そう言って暁蕾が声をかけたが
「そんなのダメに決まっているじゃない。部外者に鍵を預けられるわけないでしょ」
(部外者か……随分な言い方ね)
「あ、それからこれを使って目録を作るのよ」
(あっ!
可燃物がたくさんある倉庫の中に蝋燭は置いておけない。昨日使い終わった蝋燭は女官部屋へ返しに行ったのだ。
暁蕾が女官部屋へ向かおうとした時、聞き覚えのあるパタパタとした足音が聞こえてきた。
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