第19話 暁蕾、現実を知る
「噂には二種類ある。ひとつはいわゆる流言飛語の類いだ。誰かをおとしめる目的で流されるものだ。もうひとつは何だと思う?」
「火のない所に煙は立たぬ。とおっしゃりたいのでしょう」
「お前はこの噂がそのどちらに属するものだと思っているのだ?」
「はい、そもそも劉家が正当な商いとして武器を他国に売っているのであれば、これは噂でも何でもなくだだの事実だということになります。ただ、そのことが
「でもさー、劉家が武器を取り扱ってるなんて聞いたことないよね? それに武器を外国に売るには皇帝陛下の許可がいるんでしょ? だったら
(適当そうに見えて、なかなか鋭い質問するのね)
「俺は聞いてない。全てが俺の耳に入るわけではないのだ」
「だったら、皇帝陛下に直接聞いてみるしかないよねー」
そう言って
「簡単に言うんじゃない。皇帝陛下に『後宮で、陛下が劉家に他国への武器売却を許可されたとの噂が立っております。本当ですか?」と聞くのか?」
「
暁蕾は感じた疑問を口にしてからしまったと思った。またもや、ものすごくぶしつけな質問をしてしまった。
「
暁蕾の心配をよそに
「はい、存じております。皇帝陛下の身の回りの世話をされる役職でございますね。お名前は確か……」
(あれ? 名前が出てこない、そんなはずないんだけど)
「申し訳ありません。お名前が思い出せません」
「だろうな。その方は自分の名前が表に出るのをとても嫌っておられる。だからあらゆる公式の文書に自分の名前を書くことを禁じているのだ」
一瞬、
「これ以上はやめておこう。お前の身の安全が保証できないからな。ただひとつ言えるのは宰相や俺の力など、今の溏帝国では大したことがないということだ」
「
(ちょっと待って! そんなこと出来っこないわ)
「お待ちください、
焦って抗議の声を上げようとした暁蕾を見て
「おや? お前でも焦ることがあるのだな。安心しろ。何も後宮の中で諜報(スパイ)活動をしろと言っているのではない。実は
「そんな、私などが
「女官採用については心配するな。しばらくの後、女官を募集する旨の知らせが南宮にもあるだろう。お前はそれ応じて
あまりに一方的な申し出に唖然とする
「ごめんねー。暁蕾ちゃん。こいつこんな言い方だけど、暁蕾ちゃんに危険が及ばないようにいろいろ動いてたんだよー」
そう言って
「そ、そんな訳あるか! 黙ってろ、
(このふたりいったいどういう関係なんだろう?)
下がってよい、と言われ暁蕾は
それでも
ともかく次にやるべきことが決まったのだ、今は前に進むしかない。そう思い気合を入れ直した暁蕾は後宮への道を急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます