第17話 暁蕾、御史台へ行く
(調子に乗ってここまで来たけど本当に会えるのかな?)
膨らむ不安を振り払うように、
もしかして暁蕾が来るかもしれないと、あらかじめ知らされているのだろうか? いやいやそんなはずはないと暁蕾は頭を振った。様々な国の難題を抱えている
「どうぞお入りください」
程なくして戻ってきた門番が中へ入れてくれたので、石の階段を登り御史台の回廊へと登った。回廊の入り口には下級官僚と思われる若者が待っており暁蕾を
おそらく下級女官がこの建物を訪れることはほとんどないはずなのだが、誰も暁蕾に注意を向けなかった。みな自分の仕事に集中しているのだ。
「大夫様、暁蕾様をお連れしました」
回廊の奥に格子模様が彫り込まれた木製の扉があり、その前まで行くと若者は部屋の中へ呼びかけた。
「入れ」
聞き覚えのある声が返ってきた。若者が扉を引き開けて入るように
「やっと来たか。頭を上げていいぞ」
くだけた調子の言葉に戸惑いながら視線を上げると、
――えっ! もうひとりいる。
回廊の途中で見た部屋よりは多少広いものの相変わらず装飾のない部屋だ。部屋の奥に執務机と椅子があるが、そこには誰も座っていない。部屋の中央にも会議用とおぼしき長机が置いてありその脇にふたりの男が立っていた。
向かって右側に立っているのは
(えっ! 紫の
知らない男が着ている
「失礼しました! 尚書省に勤めます
暁蕾は慌てて再度、拝礼した。
「初めまして、
謎の男からいかにも軽い感じの返事が返ってきた。
隣で冷たくそれでいて鋭い琥珀色の瞳でこちらを見下ろしている
「大変申し訳ありません。あなた様のお名前を存じ上げません」
謎の男は少しだけ眉を上げて
「俺の名前は
「この男は何て言うか……私の仕事を手伝ってもらっている仲間だ。だから安心していいぞ」
「承知致しました。
「立ってるのも何だから座ろうよ。さあ
(えーっ、下級女官の私に同席しろって言うの?)
言葉を交わすだけでもおそれ多い身分のふたりと同じ机を挟んで座れというのだ。暁蕾は躊躇した。
「いいから早く座れ、これは命令だ」
「暁蕾ちゃんを後宮に連れてくる時もそんな感じだったの? 暁蕾ちゃん、怖かったでしょ。こいつ悪いやつじゃないんだけど、ごめんねー」
からかうような調子で言われ
「お前、ちょっと黙ってろ。話がすすまん」
「ここに来たということはうまく行っていないのだな?」
「私はこの通り後宮の下級女官でございますが、女官であっても溏帝国と異国との外交や交易を学びたいと思いまして、
「ほう、それは見上げた心掛けだな。お前から見た我が国と他国との関係はどうなのだ。言ってみよ」
「
(
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