第15話 暁蕾、特技を使う
部屋には木製の棚があり、糸で閉じた書類と外交関係の本が平積みになっている。パッと見では内容がわからないので一冊づつ手に取ってみるしかない。
暁蕾は手近な一冊を手に取る。表紙には『
暁蕾は、注意しながら紙をめくっていく。一冊めくり終わると次の一冊に取りかかる。その棚にあった二十冊をすべてめくり終えるのにかなり時間がかかってしまった。
(それじゃあ、やりますか!)
実のところ暁蕾は目で追った文字を読んでいない。ただ何も考えずに眼球に映像を写しただけなのだ。ここからが暁蕾の本領発揮であった。
暁蕾の脳内にいま取り込んだ情報が整理された状態で浮かび上がってくる。
『前皇帝歴◯◯年、
これは、暁蕾も知っている情報だった。安慶から遠く離れたはるか西方での出来事だったので、安慶の住民の関心は低かったが、当時、溏帝国最強と言われた紗州騎兵が大苦戦した戦いだ。
『溏帝国皇帝と
(人質を交換?
これは暁蕾も知らなかった情報だった。おそらく公表されてないはずだ。
(でも、武器横流しには関係ないかも)
暁蕾は、隣の棚に移動して書類を手に取る。今度は表紙に『
(
暁蕾が自分の記憶を探っても
今度はさっきの
『火舎国は、溏帝国の進んだ技術や制度を学ぼうとしきりに留学生を送って来た。一方で自国に
(
公主とは、皇帝の娘のことだ。要するに皇帝の娘を
(うーん、これも横流しとは関係なさそうね)
さすがに頭に情報を一気に詰め込みすぎたのかクラクラとめまいがしてくる。
『
(この国ヤバいんだよねー)
(うーん、一番怪しいのはここかなー。でもここに武器を渡すなんて略奪の手助けをしているようなもんよね。そんなことあるかな?)
昼を告げる
※※※※※※
ただそれだけだった。もしかしたら
南宮の回廊に入ってしばらく進んだところでパタパタと前方から近づいてくる足音がした。
「
(うわ、今日はついてないなー)
やって来たのはいつも
「さあ、こっちこっち」
女官は
「
女官は辺りを気にしているようにキョロキョロし、小声になった。
「最近、皇太后様に高価な贈り物をしてるんですって。もしかしたら皇太后様の派閥に入られるのかしら?ねえどう思う?」
後宮が皇太后派と皇后派にわかれて権力を争っていることは
「ごめんなさい。私、難しいことわからない」
「だめよーそんなことじゃ。どちらの派閥に入るかで私たちの将来が決まるのよ。もっと真剣に考えなきゃ!」
「な、なるほど。参考にする」
(ううっ、話を合わせてしまった。ハッキリと自分の意見が言えないからこんな目にあうのに。暁蕾みたいに自分の意見がちゃんと言えればなあ)
「それでね、まだあるのよ」
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