第13話 暁蕾、再び受け取る
暁蕾の笑顔を不気味に感じたのか、
「申し訳ありません。
嫌がっている
「董艶だと!」
「
「わかりません。董艶様は後宮で
「
「
「つまり俺に丸投げってことか。あの方らしいと言えばそれまでだが」
「あの、私には話がよく見えないので、教えていただけますか?」
「誰もいないな……。よし、いいだろう。まだ全部は教えられないが何も知らんと危ないからな、近くに来い」
「えーっ」
以前に比べてかなり清潔感を取り戻した
「あーそうか、そうか、知りたくないのか。じゃあこれを持って帰れ、帰れ」
「冗談ですよ」と言いながら暁蕾は
「我が国を守る兵士の装備について何か知っているか?」
暁蕾は首を横にふる。
「この発注書に書かれている品物は兵士ひとり分の装備品を表している。硝石と硫黄は違うがな。ところがだ、良く見ると我が溏帝国の装備品と微妙に違うのだ」
「どういうことですか?」
「我が国の兵士は、基本的に国を異民族の侵入から防ぐことを想定して組織されておる。なので個人の装備としては槍や刀剣を手近に置いておくのが一般的だ」
暁蕾は、溏帝国の歴史と現在の広大な領土を思い浮かべた。その強大な軍事力で領土を拡大し続けた溏帝国は前皇帝の治世において歴史上、最大の領土となった。一方、西方に細長く領土が延びたことにより守るべき国境線の長さは膨大なものとなっている。
現皇帝は膨らんだ軍事費を削減するため領土の拡大から現在の領土を守ることに舵を切った。よって兵士の装備も他国の侵略時に騎兵が多く使う弓から槍や刀という近接戦闘用の武器を重要視するようになった。
「つまりこれは我が国の一般的な装備ではなく、他国に侵略するための装備だということですか?」
「おお、ものわかりが良いな」
「ですが、
暁蕾の問いに
「それがな、わかるのだ。なぜなら俺はかつて、これと同じものを見たことがあるからだ」
「ええっ、そうなんですか? いったいどこで見たのですか?」
身を乗り出してくる暁蕾に気圧されてか、
「順を追って話すぞ」
そう言って
「その兵士が持っていたのが、これと全く同じ内容の発注書だったのだ。つまりこれは他国に横流しするための発注書そのものだ」
「えっー、じゃあ
「バカを言うな、それなら俺の所へ持っていけなどと命ずるわけがあるまい。これは俺への依頼だ」
「依頼?」
暁蕾は頭をめぐらす。前回も
「前回、
興奮気味の暁蕾に対して、
「声が大きいぞ。誰かに聞かれたらどうする。だがまあ、お前の言うとおりだ。あの時も、お前と同じように
暁蕾はようやく今回の一件に関する全貌が見えてきたような気がした。だがまだいろいろと疑問が残る。
「でも、
暁蕾の言葉に
「暁蕾……、一回しか言わんと言ったが、わかっとらんようなのでもう一度言うぞ。『宦官について調べるな』だ。」
「つまり、この横流し事件には宦官が関係しているということですね」
「よいか、あやつらの目、耳はそこらじゅうに張り巡らされておる。細心の注意をはらって事を進めたのに、俺はこのざまだ。このやり方はやつらの目と耳をごまかす苦肉の策なのだ」
「でもどうやって
部屋の外にある廊下から足音と女官の笑い声が聞こえた。そろそろ夕食の準備が始まる時刻だ。
「長く話しすぎた。今日はここまでだ。とりあえず返事の書状をしたためるから
「かしこまりました」
受け取って部屋を後にしようとすると、「ちょっと、待て」と呼び止めれる。腰のあたりをゴソゴソと探っていた
「
「そうだ、これを持って皇城の書庫へ行き、我が国と隣国の関係について調べて来てくれ。この魚符を持っていれば文書を自由に見ることができるはずだ」
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