第11話 暁蕾、仕事を命じられる
「バイファ コアーブキイル ドールコ」
董艶妃が言葉を発したがなんと言っているのか聞き取れなかった。いや、聞き取れたとしても理解できなかっただろう。『聞いたことのない異国の言葉で話す』、暁蕾は
「申し訳ありません。今なんとおっしゃったのか、聞き取れませんでした」
「急ぎすぎる
抑えた声音で
(私が急ぎすぎているということ?)
「失礼しました。ご事情がおありということですね?」
暁蕾は、西方からの商人が
転じて、物事の結論を急ぎすぎると失敗を犯すので気を付けろと言う戒めと思われた。
「
「えっ?」
まさか、董艶妃の口から
(どうしよう? 正直に答えた方がいいのかな?)
「はい、ございます。この発注書を提出する皇城の窓口が
暁蕾は、一瞬迷ったが正直に答えることにした。宦官について忠告を受けたことは黙っておくことにする。
「あの男をあのような閑職に追いやったのは宦官じゃ。まだまだ使える男だというのに勿体無いのお。そなたもそう思うであろう?」
(また宦官か、聞きたくなかったな)
暁蕾は、言いようのない不安が胸に湧き上がってくるのを感じた。
「はい、大変優秀な方で前皇帝陛下も重用されたと存じております」
「
暁蕾は頭を殴られたような衝撃を覚えた。自分たちが宦官の片棒を担いでいる?全く身に覚えがないことで頭が混乱する。
「失礼ながら……滅相もありません。私どもはただの備品係です。そのようなことに加担するなどとんでもないことでございます」
「嘆かわしいことじゃ。自分の身に災難が降りかかろうとしておるのに全く気がついておらん。まあよい、わらわは寛大じゃからのお。そなたたちを救ってやろうと思って呼び出したのじゃ。もちろんだだで助けてやるわけにはいかん、それ相応の対価が必要となる。わかっておろう」
(わかってない、全然わかってないから)
「この発注書を
「恐れながら
「グドーリ ビドゥルス アルアビー ルー」
(また異国の言葉、もういやっ)
「『宦官の言うことをそのまま信じるな』じゃ。後は
「下がれ」
と命じられ暁蕾は
「わかっていると思いますが、ここで見聞きしたことは決して口外してはなりません。上司の
女官はそう言い残すと
(宦官の言ったことをそのまま信じるな、か。そう言えば
確かに宦官の言葉を鵜呑みにするなと言っていたが、同時に宦官のことを調べるな、とも言っていた。董艶妃の命令は宦官について調べることになるのではないか? だとすれば自分は危険な仕事をすることになる。
北宮の殺伐とした雰囲気もあって南宮に戻る暁蕾の足取りも重くなった。暁蕾が帰ってくる足音を聞きつけて
「
「ありがとう、
心配ないと両手を広げて見せる暁蕾に、
(やだ、かわいい)
普段、無表情な
「それでね、申し訳ないんだけど……かなり面倒なことになっちゃった」
暁蕾は、
「と言うわけで董艶様に関する噂は半分はほんとで半分は間違いって感じかな。全然、筋骨隆々ではなかったし」
(いや、半分じゃないか。九割本当かも)
「
「やろうよ!
どうする? という言葉を暁蕾が発する前に元気な返事が返ってきた。
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