第5話 暁蕾、仕事に励む
振り向くと女官がひとり立っていた。上下とも鮮やかな赤の
目は切れ長で鼻も尖っている。美人には違いないのだが八の字の眉がキツイ印象を与えている。手には1枚の紙を持っていた。
「あなたたち、そこで何をしているの?」
詰問するような強い調子で言う。
「私たちは、後宮の備品を調達する係です。ここにある発注書を取りに来たんです」
暁蕾は目の前の女官の服装と、ひとりで歩いていることから自分と同じ身分だと判断した。
「あら、誰かと思ったら田舎者の
あざけるような調子で女官は言う。田舎者と言われた
「私は今日から後宮で働くことになった、
「私は
「どういうことかしら? 私が数刻前に入れた発注書がまだ残ってるじゃない!」
「ねえ、新入りさん。私の仕える
「ご注文は箱に入れられた順番に処理させて頂いてます。少々お待ち頂けますか? その発注書はこちらでお預かりします」
キッパリとした暁蕾の言葉に
「順番? そんなものあなたの判断でいくらでも変えられるでしょう。
予想外に言い返されたことで自尊心を傷つけられたのか、
(自分のご主人様の威光を傘にきて天狗になっているのね。めんどくさいな)
(やっぱり、そう言うことか……)
暁蕾は
「
「えっ! 何それ?」
――宮城倹約令、それはどんどん
「紅玉宮様からは今月すでに6枚の発注書が提出されています。そのいずれもが、米、油、蝋燭の発注ですね。合計で米5俵、油15升、蝋燭500本となっています。これだけの量になりますと、今回の倹約令に
「あ……えっとおー……そう言えば、お米や油はまだ倉庫に在庫があったわね。そうそう蝋燭もまだ足りそうだわ。その発注書返して頂けるかしら、えっと……暁蕾さん」
早口で言い訳じみた言葉を発したかと思うと暁蕾の手から発注書をひったくり、足早に立ち去っていった。
(やれやれ、なんとか追い返せたわね)
小さくため息をついた暁蕾の隣で、
「暁蕾……すごい……尊敬する」
「たまたま陛下の勅令を知ってただけだよ。
「倉庫を見に行こうか」
明かり取りの窓が建物の上部にいくつもあるため、倉庫の中は思ったよりも明るかった。壁面には背の高い木製の棚が設置してあるのが見えた。
「あれっ! ええっと……品物はどこ?」
暁蕾は思わず声を上げた。棚には何もなかった。全て取りに来た侍女によって運び出されたのだろうか?
「
「そう、ここで貴妃宮ごとに仕訳されるの」
確かに、棚は仕切り板で区画を分けられており、それぞれの貴妃宮あてに届けられた品物を置いておくような仕組みになっている。
「ここに届けられた品物の確認は誰がするの?」
「それが……少し前に宦官がやって来て品物の確認と貴妃宮への伝達は自分達がやるから、お前たちはやらなくてよいって言われたの」
(宦官か……なんかイヤな予感がする)
暁蕾と
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