第4話 暁蕾、仕事に取り掛かる
礼儀作法の授業をまとめて行い、ある程度の儀礼が身についてから仕事に取り掛かれば良いのでは?と暁蕾は思ったのだが、おそらく後宮も人材不足なのだろう。もしくは仕事を通じて儀礼も学んでいくということなのかもしれない。
「私は他の女官の指導があるので、一旦ここを離れます。
そう言って
「
「
(もしかしてこの子、人見知りなのかな?)
「私は安慶のはずれに住んでたんだ。父さんは
「安慶は……すごく人が多い。それに食べ物もとても美味しい」
「そうか、そうだよね。人も物も帝国中から集まってるもんね」
一瞬、近所の子供に学問を教えている時のことを思い出した。生徒にもいろいろな子供がいて活発で自己主張が強い子供もいれば、引っ込み思案でなかなか自分の意思を言葉にできない子供もいる。
「
「えっと……今日で3週間かな?。前の担当者が病気で仕事ができなくなり、ここに連れて来られた……の」
(3週間ということは
「ねえ、
「わかった……仕事教えるよ」
「えっと……この書類の山は、もしかして品物の発注書なの?」
「そう……数が多すぎてなかなか進まない」
○○宮
米 1
油 2
蝋燭 50本
というような書式で書かれている。
暁蕾には見たものを瞬間的に記憶する能力があった。それだけではなく覚えた内容をもとに計算を実行し答えを弾き出すこともできる。本来なら算盤を使って1枚1枚足し算をしていくところなのだが、全部の書類に1回目を通すことで全容を把握することができた。
いったい何故こんな能力が身についたのか?いつから出来るようになったのか暁蕾にはわからなかった。物心ついた時からすでに身について、周りの子供と自分が違うということがだんだんとわかってきたという感じだった。しかも、驚くべきことにこの能力は暁蕾が本を読んで知識を身につけるとどんどん進化しているようだった。
(うん……同じ貴妃宮から何枚も提出されているし、発注したばかりの商品もすぐに再発注されているわね。それに品物の記載されている順番がバラバラだし、単位もバラバラだわ。これは手間が大変ね)
「
「うう……あまり覚えていない。私、計算が苦手だからなるべくすぐに持っていくようにしている」
「そうかあ……」
さらに細かく内容を聞いてみる。
後宮に知り合いもおらず、かといって他の女官に聞く勇気もなかった
「そしたら……バラバラに持って来ずにちゃんと1枚の紙にまとめて持ってこいと怒られたわ」
「うーん、そうなるだろうねー。それだと皇城の担当者が品物と数を集計しないといけなくなるから、嫌がるだろうね」
暁蕾はなるべく相手を責める調子にならないように注意して答えた。
「だから……2枚とか3枚分の内容を足し合わせてから他の紙に書き写した。それで持っていくようにしたわ」
(2枚から3枚かあ、その度に書き写す手間と皇城へ持っていく手前ができちゃうわね)
「貴妃の侍女たちは発注書をどうやって持ってくるのかしら?」
「この部屋を出た先の廊下に発注書を入れる箱があるわ」
「その場所を教えてもらえるかな」
「ちょっと、あなたたち!」
暁蕾たちが箱を覗き込んでいると突然、背後から甲高い声がした。
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