第七話『爆誕!砂漠のオアシス②』



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【名前】マイセン

【レベル】19 【性別】女 【年齢】16

《攻撃力》 76(+10 職業スキル効果 宮廷式護身術 Lv1)

《防御力》 76(+2 職業スキル効果 宮廷式護身術 Lv1)

《素早さ》 76(+2職業スキル効果 宮廷式護身術 Lv1)

《賢さ》  100(+2職業スキル効果 宮廷式護身術 Lv1)

《運気》  50(+2 職業スキル効果 宮廷式護身術 Lv1)

《MP》  304(+2 職業スキル効果 宮廷式護身術 Lv1)


【メインスキル】

白妙波紋ヴェレンシュピール


職業ジョブスキル】

『宮廷式護身術 :Lv1』

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 …………。



「このレベルでこのステータスか……お前すげえな。30レベルの冒険者と同じぐらいあるぞ。

メインスキルも持ってるし」


 と彼女のステータスに戦慄しながら、とりあえず受付嬢にこの紙を提出した。

 

 受付嬢は『少々お待ちください』と言って、その紙をもって窓口からどこかへ行った。



「もうみえなくなりました…」

 そして彼女はステータス情報が見えなくなったことを悲しがっていた。効果時間が過ぎたのだろう。



 俺のプライドが傷つくので言わないが、マイセンは俺と同じほどの才能を持っていた。


 ステータスの数値だけでなく、メインスキルまであるし将来有望すぎないか……?

 


「すてえたす……? とはなんでしょうか。

それ以前に、今飲まされたものはなんですか?」


 ステータスのことを説明することは、この人生の中で一度もなかったので少し戸惑った。


 まあ騎士や冒険者とか、戦闘行為をする人間以外にとってはステータスなんてどうでもいいのだ。

 

「まあ、ステータスのことも知らないだろうとは思ってたけどな。

簡単に言えば名前とか年齢の根本的な情報だけでなく、能力面を数値にして“見える化”したものだ。

今飲んだのはステータスを一時的に可視化させる効能を持った魔法薬瓶ポーション


「初めて知りました……。

ノリタケさんは、こういうことを説明するときは頭が少しだけ良くなるのですね」


「うるせえよ」


「メインスキルと職業スキルとはなんですか?」


「それについては後でクエストにでも行った時、ちゃんとした説明をするから待て。どんなスキルかもわからないのに、今発動でもされたら大騒ぎになる。………まじで今使おうとするなよ? 

スキル名を言った瞬間、勝手に発動してしまうからな」


「そういわれたら今、使いたくなってきました。確か、ヴェレン…」


 と彼女が本当にメインスキルを使おうとしたので、俺は必死に止めた。


「おいやめろ!! 今のフリじゃねえから」


「わかりましたよ…」


 とマイセンは若干拗ねた感じで言った。

確かに、自分にある未知の力に好奇心を抱いてしまうのは仕方ないのかもしれない。


 しかし、メインスキルか……。

白妙波紋ヴェレンシュピール……なんか、回復系っぽい響きだな。


「でも、なんか文字的に多分……回復系のスキルか何かだと思うけどなあ。

もしそうだったら、マイセンの専門的な職業(ジョブ)はヒーラーになるな」


「職業とかも、既に決まっているんですか?」


「まあこれに関しては自己申告制だから、ヒーラーが嫌なら他のやつを選択すればいいし。世の中には回復系のスキルが全くないのにヒーラーを名乗ってる異常者もいるしな」


「そういう、ものなんですね……。ちなみに貴方の職業を聞いても?」


「全部だ」


「はい?」


「全部、全て。オール」


「ここで笑いとか狙ってこなくても大丈夫ですよ」


「嘘じゃねえよ!

剣使うし、盾も使うし、仲間回復させるし、魔法も使うし、弓も使うし、魔獣も召喚するし、念仏唱えるし、音楽も奏でるし場合によっては歌って踊る」


 と俺は剣を振るう仕草をしたり、音楽を奏でる仕草をしたり、踊りながら説明した。


「すごいのかキモいのかよくわからないですね」

 彼女はドン引きしたような表情を見せた。


「すごいんだよ!

これだけ職業あるのは世界に俺しかいないからな!

……ちなみにさっき出会った【社会的勢力】のマンダさんもヒーラーだ」


「……マンダさん?」


 と彼女は、一体誰の事を言っているのか理解できていない様子だった。

そういえばきちんとあの人たちの名前を教えていなかったかもしれない。


「あの真っ黒なサングラスかけて、スーツきてたオールバックの髪型の人だよ」

 と俺が言うと、彼女は思い出したかのようにハッとした。


「あのお方が?! 

てっきり全員が特攻しかけていくような、脳筋パーティーかと……」


 俺はその言葉に深くうなずいた。


「バリバリ戦ってるし、あながち間違ってはないな。

あと一応ルピーさんがパーティーリーダーだけど、金の管理とか計画とか、頭脳が必要になる事は全部マンダさんがやってるんだよ」


「へーー。そうなんですか」


 彼女は納得したような顔をすると、俺の身体をじろじろと見始めた。


「な、なんだ」


「それで……私のステータスを見るだけみましたが、あなたのステータスは教えてくれないのでしょうか?」


 と彼女は俺にそう言った。


 ……まずい。………教えたくない。


「……俺のステータスは秘密だ。 

ま、最初はレベル上げに苦しむことになると思うけど、頑張ることだな。

19レベルとかまだまだひよっこだからな」


「む」

 俺の言葉をきいて、マイセンは露骨に不機嫌になった。


「……俺だって冒険者になる以前から、養成所で何年も訓練してきたんだ。

多少は苦労してもらうからな」


「では元お仲間のレベルだけでも教えてください! 

今後の目標になるので!」


 と彼女は俺に食い下がってきた。


「しょうがないな……。

パーティーリーダーのアウガルテンが90。ミントンが86。エインズレイが87だ」


「これは何ですか? 号外、と書かれていますね。

貴方の事もかかれていますよ」


 彼女は、俺の言葉を聞いて流れるように無視をすると、受付窓口の前に置かれていた『週刊冒険者名鑑』を手に取った。


 まさに、ずっとこの時を待ち構えていたかのようだった。



 その雑誌の表紙にはいつものように【南国の島のマンゴー】の面々や【社会的勢力ごくどう】の兄貴達が載っていた。今週はルピーさんの独占インタビューがあるらしい。 


 ……てかこのインタビューするためにあの人たち今日ギルドにいたのか!!

そうツッコミたくなる気持ちを抑えて、問題の箇所を見た。


 そしてそんなレジェンド的な彼らを差し置いて、表紙のど真ん中を大きく飾るように『ノリタケ、不祥事を起こし南国の島のマンゴーを追放』と書かれていた。ついでに盗撮されたあろう俺の顔写真も載っていた。


 

 これの存在がバレないように、さっきから無意味にマイセンに話しかけて、視線が向かないようにしていたのに!!


「ずっと気になっていたんですよね。

恐らくこの雑誌に”貴方”のことが色々と書かれていそうです」


「………なんだ? 週刊、冒険者名鑑……? 

初めて見るなあー。でも、その雑誌汚いから触らない方がいいんじゃないか? 

変なおっさんが金玉掻いた後に読むもんだし。読まない方がいい。

うん、そうしたほうがいい」


 俺は自分でも厳しいとわかっていながらもシラを切るしかなかった。


「初めて見ると言っていますけど、それが本当ならば、なぜ”変なおっさんが金玉掻いた後に読むもの”であると分かるのですか? それでは、読みます」


 馬鹿が。

それはお前に下ネタを言わせるための”フェイクだ”。

まんまと乗りやがったな?


 俺は自分が不利になっていくことを自覚しながらも、肉を切らせて骨を断った。


「…わかった。わかった。 

な? 頼むから読まないでくれ」


「私のレベルをあざ笑った罪です」


「ならレベリング手伝うから。楽に経験値稼げる方法知ってるから……」


「そうですか」

 そう言いながら彼女は普通にページをめくった。

 

「その本に俺のステータスとか何も載ってないからやめろ!!」


 俺は唸り声をあげながら黙ってみているしかなかった。


「『“金線”ノリタケ、今月もレベル80のまま停滞。

パーティー脱退後にSランクの意地を見せるか? ソロでの活動に期待』

なんてことがかかれてますね。煽られてますよ」


「それは、うざいな……」

 好き勝手書かれているのは知っていたが、ガチのマジで腹が立つ。

 

 なにがSランクの意地をみせるか?だよ。Gランクだろうが俺は。



「あっありました! 貴方のステータスが隅々まで書かれています。

やはり載っていないというのは嘘だったんですね。

えーーーとレベルが80で、《攻撃力》が320《防御力》320……」


 彼女はピンと姿勢を正すと、実に透き通った綺麗な声で音読し始めた。


「…読まなくても良いから」


「《素早さ》が320《賢さ》200《運気》200《MP》1280……。

本当に職業スキルが沢山あるのですね。

メインスキルの『金彩円環ゴールドライン』と、『宝石箱ダイヤモンドコレクション』だけは格好いいとおもいます」


「そうか」


 俺は実にイライラしながら言った。


「あなたの名前の前に”金線”と書かれてありましたが、これは二つ名ですか?」


「ああ。いいだろ?

まあお前には二つ名はまだまだ早いからな。

なんか言われたい二つ名とかあるのか?」


「真・極々悪令嬢V4(極限突破)」


「ぶ、V…? なんだそのしんどい二つ名…。

お前それ言われても嬉しくないだろ。それ以前に俺が嫌だよ」



 マイセンに読まれてしまったが、俺のステータスはこれである。

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【名前】オークラ・ノリタケ

【レベル】80 【性別】男 【年齢】17

《攻撃力》 320(+90 職業スキル効果 拳法家Lv9)

《防御力》 320(+50 職業スキル効果 戦士Lv5)

《素早さ》 320(+50職業スキル効果 シーフLv5)

《賢さ》  200(+50職業スキル効果 薬師LV5)

《運気》  200(+80 職業スキル効果 歌姫Lv8)

《MP》  1280(+200 職業スキル効果 白魔道士lv5)


【メインスキル】

《金彩円環(ゴールドライン)》

《宝石箱(ダイヤモンドコレクション)》


【職業スキル】

『拳法家Lv:9』 『黒魔道士Lv:5』 『白魔道士Lv:5』 『戦士Lv:5』 『暗殺者:Lv5』 『歌姫:Lv8』 『薬師:Lv5』『錬金術師:Lv5』 『獣使い:Lv5』 『侍:Lv6』 『泥棒:Lv5』 『召喚士:Lv5』 『精霊使い:Lv5』 『魔法剣士:Lv5』 『弓士:Lv5』 『僧侶:Lv5』『曲芸師:Lv5』

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 とマイセンと小話をはさみながら待っていると、ようやく受付嬢が戻ってきた。


「マイセン様のステータス情報をお預かりしました。

同時にGランク冒険者として認定されたので、パーティー編成の方へ移りたいと思います。 パーティー名は既にお決まりでしょうか?」


 と受付嬢が言った。


 その瞬間、俺の脳内で昔の光景がフラッシュバックした。


 そういや、ここであいつらがパーティー名で揉めまくってたから、その隙に俺が言いに行ったんだよな……。


「なんかあるか?」

 と俺はマイセンに聞いた。


「あなたが決めても良いですよ」


 と彼女は言った。本当にどうでもいいというような顔をしていた。

案外、パーティー名にこだわるような性格ではないらしい。


「じゃあ………『砂漠のオアシス』で」


 と受付嬢に言った。


「承知しました。これにて晴れて新パーティーの結成になります。

おめでとうございます。ノリタケ様とマイセン様のご活躍にお祈り申し上げます。次の方どうぞ」


 と追っ払うように言われた。


   *


「どうだ格好いいだろ!」


 俺のセンスが光りまくっている気がする。


「格好いいとかは特に思わないです。無味無臭ですね。

これならダサいほうがまだ笑いにはなりましたね」


「でも『南国の島のマンゴー』よりは良いだろ」


「それもそうですね」


「じゃあ、まだ時間あるし。すぐにできるクエストでも受けるか」



 と俺は言って、クエストを受注するために、クエストボードがある場所へと向かった。


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S級冒険者パーティーから追放された男と、婚約破棄されて追放もされた公爵令嬢が出くわしました〜〜先行き不安な彼らは冒険者として新出発するようです〜〜 おむ●び @syamu_syosetsu

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