浮かれた世界④
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「来なきゃよかったわ、こんな異世界。」
アイリーンは騒がしい街を歩きながら、うんざりした様子で言った。
「みんな浮かれてますね。僕が見習うべきはこの街の人達ですか?」
ルイスはニヤッとしながらアイリーンに聞いた。アイリーンはジト目でルイスを睨んだ後、燦然と輝く街を横目で見ながら言った。
「ある意味ね。それに、この街の人達全員が好きで騒いでるってわけじゃないと思うのよ。周りに合わせてるだけで、心の中ではこの街の雰囲気が苦手だって人もいるはず。まあ、集団で生きていくには、ある程度の協調性が大事だってことよ。だから、ルイス君も私が朝起きれなかったからって怒ったりしないで、受け入れることが重要だと思うわよ。」
「…それって、姉さんが協調性ないんじゃないですか?」
ルイスは呆れた顔で言った。
しばらく歩いていると、この街の中ではだいぶ静かで薄暗い場所に出た。遠くの方からは、相変わらずどんちゃん騒ぎが聞こえるが、ここではうるさくしている人達は愚か、そもそも人自体がほぼいなかった。
「だいぶ静かになりましたね。まるで、違う街に来たみたいに。」
「どんなものにも光が存在すれば影ができるってことね。似たようなことを、詩人のゲーテや、大魔王のゾーマなんかが言っていたわ。」
アイリーンとルイスは、街に流れる小川に沿って歩いていた。
すると、しばらくしてランプが灯っている一軒のカフェを見つけた。
そのカフェにはオープンの看板が扉に掲げられていた。
「あ!カフェがありますよ!姉さん、入ってみますか?」
「…そうね。この街の中だと一番落ち着けそうだし。」
外からカフェの中を見る限り、お客さんは誰もいないようだ。
内装は木造りで、綺麗で落ち着いた雰囲気があり、この街とは別空間のようだった。
2人が外から店内を眺めていると、入り口の扉が中からガチャっと開いた。そして、店内から1人の女の子が出てきた。
その女の子は、茶色の髪の毛を後ろで結び、白色のエプロンを身につけていて、アイリーンと同じ、十代半ばくらいの見た目であった。
その子は、扉の看板をオープンから裏側のクローズにひっくり返した。
そして、そのまま店内に戻ろうとしたが、中に入る前に、店の前に立っているアイリーン達を見つけて動きを止めた。
アイリーンとルイスはじっとその女の子を見つめたまま突っ立っていた。そして、女の子の方もまた2人を不思議そうに見つめていた。
しかし数秒後、その女の子は何かに気づいたようで、あっ!という声と共に、驚いた表情を一瞬浮かべ、慌ててさっきクローズにした看板をオープンに戻した。
その女の子は、慌てて2人に聞いた。
「あの…!入られますか、店…?」
アイリーンは手を振りながらその女の子に言った。
「…今、閉めようとしていたでしょ?なら、いいわ。閉店時間間際に入るなんて、迷惑極まりないことしたくないもの。」
「い、いえ、全然大丈夫ですよ!お気になさらず…。」
この街に似合わず、彼女からは控えめな雰囲気が漂っていた。
「いえ、結構よ。どうしてもこちら側としては気にしてしまうもの。またの機会にするわ。」
アイリーンが再び歩き出そうとすると、その女の子はとても言いにくいそうにしながら言葉を紡いだ。
「あの…実はまだ閉店時間じゃないんです。閉店まではあと2時間くらいありまして…。いつもこの時間になるとお客さん来ないんで、それで…。」
そう言ってその子は、店の前に出ていた看板を指差した。そこに書かれていた閉店時間は、今から2時間後の時間だった。
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