2



 *


 「あつくるしいのよ! くっかないでよ!」


 ひとりがこわくて、さきに眠ろうとする母の布団に潜り込んだ。

 夏の夜。常夜灯が暑苦しいと母に消されてしまい、まっくらな寝室がこわくなったのだ。


 まっくらはこわい。

 子どもの幼い想像力を刺激する。

 父が怪談好きなのもきっとよくなかった。


 「くっつかないで!」


 ヒステリーをおこして宙を掻きむしる母親にびっくりして(冷静な弟は笑っていたけど)、またこわくなって、上掛けを頭から被って一晩過ごしたら熱中症になりさらに怒られた。


 家族といえどひとはひとり。

 それなのに、


 「そんなんいやや」

 土足で踏み込んできた小さな生き物。


 「そんなんいやや!」

 「けど、」

 「そんなんっ、」


 ピリピリピリピリっ


 「っ!」

 あわててスマートフォンのアラームをとめる。


 目を覚ますといまは夏でもなく、しっかり常夜灯はついている。


 そしてひとりでも、

 「あれ?」

 ひとり…?


 「あ!?」


 布団を跳ねのける。

 一緒にねたはずのトラがいない。


 「トラ!」

 午前四時、あたりはまだ暗い。

 「トラ!」

 キッチンからもれる灯りに嫌な予感しかない。


 「トラ!」


 あわててキッチンに飛びこみ、

 「あぁ…」


 「おっそいで! アオ! やまごやのあさごはんはめっちゃはやおきさんやで!」


 山小屋の朝ごはんを模したらしいどろどろのなにかをまえにテーブルを挟むトラとウサコ、そして、


 「うそだろう…」


 玉子やら米やらでひっちゃかめっちゃかになったキッチンがあった。

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【⛰お休み中🐻】のっぱらのおと 浩太 @umizora_5

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