暇を持て余した主婦(32歳)の遊び

石衣くもん

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 こんなに何不自由なく暮らしているのに、いつも満たされない心地でいる。


 結婚を機に仕事を辞めて、暫くはゆっくりしていいと主人に言われたのを真に受けてゆっくりしていた。

 好きなものを食べて、スマホで有意義でない時間の使い方をして、誰にも攻撃されない位置から勝手なことを言いながらテレビを見る。


「SNSに発信すると炎上する恐れがありますからね、日和見には手を出せない代物です。なので発信せずテレビに向かって文句を垂れ流しています」

「日和見とは辛らつで的確な自己評価だね」


 そう返してくれるのはSNSで知り合った本名も知らぬ人。

 SNSには手を出せないということをSNSでつぶやき、それに声をかけてきてくれた、恐らく暇つぶしをしたい人だ。


「刺激を求めてはいるが、変化はノーサンキューなんです」

「変わることが怖い的な?」

「怖い2、期待1、めんどくさい9」


 2多い割合になってるよ、とたくさん「w」をつけたメッセージが来て、笑うところだと気付いてもらえたことが嬉しい。

 わかってもらえた、という安心感、そうなると途端に自分を知ってほしくなる。

 いかに人間が自分語りが好きな生き物だからって、ちょろい、ちょろすぎる、私。


「計算できない女なので」

「やっぱり女の子なんだ、いくつ?」


 年齢で市場価値をはかるのは何かしらのハラスメントに抵触するはずが、匿名性の高い場所ではやり取りをするか否かの判断材料にされる。

 こんな甘っちょろいことをいうのは10代くらいの若い女だと期待をしているのか、暇つぶしではなく下世話な処理をしたい人なのかもしれない。


「いくつであってほしいですか?」

「『いくつに見える?』とも違う質問返しがきてびっくりしてる」


 今度はこちらがたくさん「w」をつけたメッセージを真顔で打ち込んで送った。

 これでこの人も自分のことを開示したくなるかしらん。


「それでいくつなん?」


 やっぱり暇つぶしでなく、手っ取り早くやりたい人なのか。

 私はこのやり取りが楽しかったが、この人は一つも楽しくなかったのかな。

 性急な選別行為に萎えて


「ネカマなんで。残念でした」


と返信。

一言「死ね」ときたので「生きる!」と原西スタイルで煽ってからブロックした。


 また有意義でない時間を使ってしまった。

 仕方がないので、文句を言ってストレスを発散するために、テレビの電源をつけたのだった。

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