第20話 幕間:バズって困って

「……」


 衝撃的な出来事が起こった翌日。はやや緊張しながら、ゲーム機の前に座っていた。

 いや、本当にすごいことになっちゃった……。あのあと、アラームが鳴ったから、ばたばたしながら配信を閉じたんだけど、次の日の朝、恐る恐るスマホを見たら、通知がすんごいことになっててびっくりしたよ。

 なにごと!? と思って調べたら、配信の青梅に関するシーンの切り抜き動画が、SNSでめっちゃバズったのが、原因らしかった。


 称号付きモンスターってなに!?

 冒証の最新作ってそんなことになってるの!?

 こんなすごいのをテイムしたヤツは誰!?

 極楽鳥花愛華って何者!?


 って感じで、私のチャンネルにたどり着いた人たちが、昨日のアーカイブを見返しまくっているらしい。おかげで再生回数や高評価、チャンネル登録者数が跳ね上がっている。

 確かに、超人気ゲームの冒証最新作で、誰も知らない新要素のかたまりである青梅は、インパクトがすごいからね。私も称号つきモンスターとエンカしました! って証拠映像を上げられたら、超興奮するもん。


「……でもさぁ。こっちはうれしく思うよりも、戸惑う気持ちの方が大きいんだよねぇ」


 だって、Vライバーとして活動し出してから一年間、ずーっとド底辺だったんだよ? それが昨日のたった数時間――青梅が出て来たのは、配信の後半だったから、下手したらもっと短い――で、一気にひっくり返って、見たことない数字の増え方した。

 そんな風に、いきなり注目されても、こっちだって戸惑うというか……。エリートぼっちには荷が重いっていうか……。一番、出回っているのが、私の土下座シーンでショックだったというか……。


「ああもう、ダメダメ! これはチャンスなんだからひるむな、私! 極楽鳥花愛華は、誰かの人生を彩る花。これからもマイペースに、自分らしく! やりたいようにゲームしてがんばる! それしかないの! そうするって決めたの!」


 ネガティブな気持ちを、頭を振って追い払う。自分で自分を鼓舞しながら、頬を叩いて喝を入れた。

 あっ、今の誰かの人生を~ってフレーズいいかも。配信開始の挨拶に使ってみよう。

 勢いのままに、また弱気になる前に、私はゲームのスイッチを押す。意識が一瞬遠のいて、すぐに浮かび上がった。


 生配信機能をオンにすれば、『私』は『極楽鳥花愛華』に、生まれ変わる。


「――はいどうも、リスナーの皆さん。あなたたちの人生を彩る極楽鳥花ストレリチア。個人勢もとい、エリートぼっちVヴァーチャルライバー、極楽鳥花愛華ごくらくちょうかあいかです。今日も冒証配信、やっていきまーす!」

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