第3話 最初の従魔……UMA?

 ぱっぱとキャラクリを終えた私は、各種チュートリアルに移っていた。

 冒証シリーズではチュートリアルをやると、ギルドへの登録をショートカットできたり、スキルに合わせた道具――料理だったら『初心者用料理キット』、みたいに――とお金ゴールドをもらえたり、色々とボーナスがある。だから、それ目当てで一個ずつ、講座を受けていったんだけれど……、


「いやーまさかレベルも上がるとは……今作、かなり親切設計なんじゃないですか?」


・シリーズ全履修済だけど、初めてッスね

・びっくりする愛華ちゃんにびっくりした

・これ、かなりチュートリアル大事だな


 なんと、スキルの使い方を教えてもらったら、レベルが上がってしまった。一点だけだけどね。

 それでもゲームスタート前に、スキルレベルをちょっとでも上げられるのは、かなりうれしい。おかげでスキルが軒並み――まだやっていない使役と、そこに紐づけされる命名、あとアイコンを選択するだけで、チュートリアルのない識別、採取、鑑定以外――LV2になった。

 ついリスナーも置き去りにして、夢中になったのは反省しているから、許してほしいな。


『これよりスキル『使役』のチュートリアルを開始します』


「さーて、お待ちかねにしてラストの、初テイムの時間ですよ。これもぶっちゃけガチャですね。まあ、犬とか猫とかカラスとか、序盤にもいるモンスターからランダムなので、そんなに強くな、え?」


 あえて最後にとっておいた、使役のチュートリアル。それを始めて、私は思わず固まってしまった。

 だって、目の前の魔法陣から出て来たモンスターが、想定していたものから、大きくかけ離れていたから。


『前方に出現するモンスターを指定し、『使役』のアーツ、テイムを発動してください』


「いや馬……馬ッ!?」


・馬

・UMA!?

・ふぁーwww

・愛華ちゃん持ってるねぇ


 目の前には、馬がいた。

 黒味の強い、深みのあるこげ茶色の、鹿毛かげの馬。たぶん、新規実装のレア使い魔なんだろうけど、衝撃のあまり、私は素で混乱する。


「ええ……完全に予想外なんですけど……」


『前方に出現するモンスターを指定し、『使役』のアーツ、テイムを発動してください』


・AIが急かしてるよ

・これ、実戦形式だったら一発もらってるな

・馬嫌い?リセマラする?


「リセマラはしません! ちょっとびっくりしただけですー! ……こほん。失礼しました。本当に馬は苦手じゃないんで、大丈夫ですよ。むしろ好きな動物の部類。……時間が押してますし、ちゃちゃっとテイムしますね」


 ああ、動揺し過ぎて、私が馬嫌いなんじゃないかって、勘違いさせちゃった。いったん深呼吸して、落ち着いてからテイムを選択。馬を対象に、スキルをかける。

 MPが消費されることと引き換えに、光が生まれる。それに当たった馬から、輪のようなエフェクトが出たけど、すぐに赤くなって割れる演出が入った。失敗したみたい。

 テイムは失敗することもあります、っていうアナウンスが入る。まあチュートリアルだから問題ないね。

 もう一度、テイムを使えば、今度は輪が緑色に輝いて、馬に吸収された。


『テイムに成功しました』

『スキル『使役』のレベルが上がりました』

『職業レベルが上がりました』

『スキル『使役』のチュートリアルが終了しました。報酬として『従魔のエサ×10』を手に入れました』

『続けて、スキル『命名』のチュートリアルに移行します。従魔に名前を設定してください』


「……よし。ちょっと予想外のこともありましたが、私の初めての相棒が手に入りました。ステータスはこんな感じです」




黒檀丸

種族:駄馬 LV1

ステータス

体力20 筋力15 走力18 器用8 知力6 精神6

HP70 MP24


スキル

騎獣 ダッシュ 運搬 体当たり 踏みつけ




『スキル『命名』のレベルが上がりました』


「名前は、『こくたんまる』って読みます。毛の色からの連想ですね。せっかく極楽鳥花愛華のままゲームをするんで、合わせて植物縛りにしてみようかなーと思いまして。……あ。そうそう、先に言っておくと、モンスターにはスキルレベルはありません」


・いいと思う

・前衛向きだ

・いざとなれば乗って逃げれるし、当たりでは


「はい。長らくお待たせしました。これで、全チュートリアルは完了です。いよいよ、『冒険の証 -world online-』の世界に、行ってみたいと思います!」


・やっとか

・いってらっしゃい

・ここからスタート


 リスナーたちのコメントを背に、私は黒檀丸と共に、ゲームの始まりの地へと、足を踏み出した。

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