第6-3プラン:総合商店の反撃! 裏切り者の存在!!
◆
いよいよ私たちのお店の開店日となった。
今日は早起きして充分に作り置きをしてあるし、足りなくなったら即座に増産できるようにもしてある。準備は万端、たくさんのお客さんが来てくれると嬉しい。そして商店街が活性化してくれたら最高だ。
もちろん、不安がゼロというわけじゃない。フタを開けてみないと分からない面もあるから。
ちなみにソレイユ水運の発着場には、ザックの手によって割り当て分の配達をすでに終えてもらっている。今は戻ってきて店の奥で私やサラ、ソフィアと談笑している。
そんな中、裏口のドアが開いて私たちのところへやってきたのは店長だった。その表情はやや固い。もしかしたら何か不安材料となる出来事があったのかもしれない。
「セレーナちゃん、総合商店が今日から新商品のサンドイッチを大々的に売り出すらしいぞ!」
「やはりそう来ましたか。……予想通りですね」
どうやら総合商店は私たちの店にケンカを売るつもりらしい。この店が商店街の集客の核という位置付けでいることは相手もなぜか分かっているだろうから、当然ではあるんだけど。
するとソフィアが立ち上がり、頭から湯気を立てる。
「汚い連中っ! 本気で私たちを潰すつもりねっ! 大丈夫なの、セレーナ?」
「心配ご無用。ソフィアは笑顔で商品を売ってくれればいいから」
「そうなの? 私、フォレス様が悲しむ姿を見たくないのよね……」
「フォレス先輩なら今ごろニタニタ笑ってるんじゃない? うまくいきすぎちゃってるから」
私は思わず相好を崩してしまった。笑いを噛み殺そうとしてもお腹がよじれっぱなしで、クックックと肩が勝手に上下に動く。
それを見て、何も知らないソフィアは当然ながら首を傾げる。
「っ? どういうこと?」
「そろそろソフィアにも種明かしをしちゃおっかな。実はね、商店街加盟店組合の中に裏切り者がいるみたいなんだよね。そのために裏で色々と布石を打ってきてたってわけ」
「はぁっ? 裏切り者ぉっ!?」
声を裏返して叫んだソフィアは、目を白黒させて動揺していた。純真無垢な彼女なら裏切り者がいるなんて考えも付かないだろうから、当然の反応かもしれないけど。
それと今の驚き方を見る限り、ソフィアはその裏切り者じゃない。当事者だとしたら大袈裟すぎるもん。もしこれが演技だったら世界でもトップクラスの女優になれる。
――でも安心した。ソフィアが裏切り者じゃないことがほぼ確定して。信じてはいたけど確信も持てなかったから、今まで内緒にしていたわけで……。
ごめんねソフィア、この埋め合わせは必ずするから。
「総合商店からお金を掴まされて情報をリークしたか、あるいはお金になると思って情報を自分から売りに行ったか。いずれにしても私たちの情報は総合商店側に漏れ伝わっていると思うよ」
「まさか……。セレーナの思い過ごしなんじゃないの?」
「そうじゃなかったら、私の店をピンポイントで潰しに来るなんておかしいでしょう。端から見れば単なるサンドイッチ屋さんの開店だよ? それなのに、あえてサンドイッチの新商品を今日から売り出すなんて」
「あ……確かにそうかも……」
「この店が商店街反転攻勢の中心だなんて、部外者には知り得るはずないのにね」
それを聞いてようやく納得したのか、ソフィアは眉を吊り上げて憤慨する。
「私たちがこんなに頑張っているのに、裏切るなんてひどい! 絶対に許せない!」
「だから私はそれを利用してあげちゃったんだよ。まっ、論より証拠。ソフィア、そこに陳列してある商品をひとつ食べてみて」
「う、うん……」
私に促され、戸惑いながら商品のコロッケサンドをひとつ手にするソフィア。その包装紙を解いて中身を手に取ると、それにかぶりついて咀嚼する。
(つづく……)
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