ローレライ
七沢ななせ
ローレライの唄
夕闇迫る雲の下
きらめく川面の鏡面を
ちいさな舟が走っている
櫂の雫をきらめかせ
鏡の川面に跡残す
山の峰は茜に染まり
かなたの山の輝きが
今日に別れをつげている
せまる岸辺の岩上で
だれかがひそかに唄っている
この上もなく美しい
甘美な響きが風を揺する
彼女は精霊ローレライ
長くまぶしい金の髪
小さな百合の髪飾り
夕暮れの風がそよそよと
白い着物を揺らしてる
口ずさむは川のせせらぎ
風に揺れるみなもの唄
それは不思議な旋律で
心をつかんではなさない
小舟を操る舟人を
唄は静かにひきつける
白い小さな跡残し
舟は静かに波を切る
迫る暗礁に目もくれず
舟は静かに波を切る
太陽は西の端に沈み
夜の女神がそっと微笑む
川のおもては黒く染まり
最後の光を投げかける
後に残ったのは小さな旗と櫂の板
小舟の姿はどこにもない
舟はどこに消えたのか?
揺ら揺らたゆたう川底に
夜の闇のなか
まるい白銀の光のなか
静かな唄が響いている
それは川のせせらぎ
風に揺れるみなもの唄
美しき河の精霊の
哀しく妖しい夕暮れと宵闇の声
ローレライ 七沢ななせ @hinako1223
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます