舞浜 夕花

 わたしは、かなり驚いていた。

「な、何なんですか! 死にたいなら死なせてあげればいいなんて、そんなのいいわけないじゃないですか!」

 そうだ。死ぬということは、その人とこれから永遠に会えなくなるということだ。その人も、他の人と永遠に会えなくなるということだ。

「何で、そんな酷いこと言えるんですか? 死んだら、本当にそこまでなんですよ? 何も出来なくなっちゃうんですよ? そんなの、いいわけないじゃないですか!」

 そう言ったわたしの言葉に、最初に屋上にいた男子生徒がこう言った。

「でも、信永先輩の言う通りかも知れません」

「あ、あなたまで何を言うんですか! っていうか、あなた、誰ですか?」

「二年の、重谷先輩よ」

 美心ちゃんがそう教えてくれるのをよそに、重谷先輩は言葉を紡いでいく。

「信永先輩の言った通りだよ。死はきっと、多分救いの一つの形なんだと思う。でも、舞浜さんの言ったことも正しいと思うんだ。乃上さんは死ぬ前に、本当にやり残したことはないの? 例えば、自分をフった人を見返したいとか。あるいは、仕返しをしたいとか、さ。そういうの、全部終わらせたの?」

 その言葉に、わたしはハッとなった。

「そ、そうだよ、美心ちゃん! 翔梧くんは、その、確かに他の人の所に行っちゃったかもしれないけど、もっといい人見つけたり、もっと幸せになって見返してやろうよ! 美心ちゃんだけそうやって傷ついてるの、おかしいよ! 死ぬぐらいなら、翔梧くんをーー」

「だから、夕花ちゃんにはわからないって言ってるでしょ!」

 わたしの言葉を遮って、美心ちゃんはこちらを睨んだ。

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